私の町の巨大ネコ 完結日:2018年7月20日 作者:かもしか 評価:★★★★☆ 4.3そのネコが行くところ、人が死ぬ。 中学に進学し最初の夏、ミレナは魔女の瞳を開眼する。ロシア生まれの祖母から受け継いだ魔女の血筋は普通の人には見えないものを見せる。ミレナが見た巨大ネコもまた、人間の死を予見する。 これは、一人の少女の成長の物語。 話数:全17話 ジャンル: 登場人物 主人公属性 女主人公 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 日常 超能力 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
主人公ミレナの青い瞳に映った、謎の巨大な猫の姿。そして、次々と見えるようになる現実とは異なる不思議な生き物たち。魔女の血を継ぐ彼女が戦うのはスライムでもワイバーンでもない。己の葛藤、誰かの想い、思惑……。だが、単に暗くシリアスな物語ではない。そう、人には喜怒哀楽全てがあって、それでこその【ヒューマンドラマ】だと私は思う。その点で、この作品はまさに人の心、もっと言えば人というものを非現実と現実を上手く共生させて描いている。軽快な主人公と祖母の罵りあい、さっぱりとしたお互いの口調は読み手の頬を緩めてくれる。しかし、そこにはやはり【愛】がある。生き生きとした人物達の言動は私たちの心をぐっと掴んで離すことは無いだろう。そして、読み終わったあと。もう一度読み直したくなる。何故なら、描かれているテーマがあまりにも奥深いからだ。だから、ぜひ手に取ってほしい。
現代日本の田舎を舞台にした、ちょっと不思議なものが見える少女の話。バトルものではありません。退屈になりがちなジャンルなのに、とても読みやすく書かれています。丁寧なのに無駄な描写がなくてテンポが良い。作者さんが如何にイメージをしっかり固めてから、真剣に言葉の取捨選択を試行錯誤したのかが伺えます。彼女の能力は「物事の本質を見抜く」と言う事に繋がっている気がしました。戦いってのは気に入らないやつをやっつけるだけじゃないんだな、と。彼女達が対峙しているものはただの利害関係を超えた、世界の悲劇の本質じゃないでしょうか。だから面白い。登場人物もシーンもカッコ良くて、その1人1人が今まで積んできた経験が無言で染み出してきてるんですよ。凄いですよこれは。強さと優しさに触れてみてください。きっと人生の経験になります。
弱さを隠して強がってしまうお年頃な主人公、孫を愛していながらもツンツンしてしまう不器用なお婆ちゃん。コミカルで軽妙なかけあいが読んでいて楽しいです。読み進めていくうちに、繊細なバランスの上にやっと立っている危うさ、針でつつけばたちまち崩れてしまいそうな、痛々しいほどの心の脆さを隠し持っている二人の姿が見えてきて切なくなります。現在第10話まで読了しました。痛々しくも愛しいこの二人の姿を最後まで見届けたいと思います。
少女と祖母の口汚い応酬にくすり、としているうちに、物語の世界観へと引き込まれていきました。魔女の血を引く少女、ミレナはある日巨大なネコを見かけます。そしてそのネコが見えた家で人が亡くなります。そんな死を予見するネコをはじめとして、他人には見えない不思議なものが見えるようになります。また、ミレナと祖母の揺るぎない絆を感じさせる関係性も素敵です。童話や純文学を思わせる雰囲気のある筆致。シンプルで美しい、著者さまの文体をぜひ大切にしてほしいです。続きも楽しみにしております!
その風景を心に映し出すような叙情的な地の文の間に、軽妙な、まるで漫談でもあるかのような会話が織り交ぜられる。 それでいて、時にその内容は核心に触れるものになっている。 彼女が何を見ているのかは分からない。 それが視覚的情報でない以上、感覚には必ず主観が混ざり込む。 ただ、これだけは分かる。 彼女が正しく理解を深めるとともに、一段一段大人への階段を歩んでいくのだ。 人の在り方を学んでいくのだ。 そして、その向こう側で見出すのは彼女の在り方だろう。 読者は彼女とともに人生の一歩目という旅をする。