評価:★★★★☆ 4.1
現代日本では自由に生きられない……黒野翔は諦めていた。
国や社会、学校が定められた枠組みから外れ生きていくのは困難で、減点方式の世の中では一度失った信用が戻ることは滅多にない。
だから周りに深入りせず、問題を起こさず、荒波を立てず、無難に学生生活を送る。それが一番楽な生き方だからだ。高校生活も三年生に上がり受験対策を意識した授業が続く日々の中で、ある手紙を見つける。
『三年生の俺へ』
そんな見出しの手紙は、二年生だった自分が書いたもののようだった。しかし、それを書いた覚えはまったくない。
『彼女を救ってやってくれ』
覚えのない過去の自分からの手紙が気になり運命の歯車がはまり、動き出す――。◆—————————————————-◆
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詳しくは公式サイトをどうぞ。
https://atheist.jp
話数:全38話
ジャンル:現代ファンタジー
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
この小説に触れたのはこの作品の作者がvtuberをやっていて小説を投稿していると聞いて読んでみたのがきっかけでした。どんなもんかと読んでみればこれがまぁ面白いこと!設定がよく練られていてストーリーの構築がしっかりしており、高い文章力は物語終盤で文章に飲み込まれるかと思うほど。でも、本当に素晴らしいのは作者のこの作品への愛着であり、こだわり。こだわって入念に、じっくり、丁寧に作られたことが伝わる作品で、だからこそ読者としても真摯に小説に向き合える。そして作品に没頭してしまうがためにどうしても涙腺にきてしまう。そんな作品で、私の大好きな小説の一つです。
あらすじで大筋でわかるような気が読む前はしていたんですけど、そんなこと全然無くて、良い意味で裏切られて、もう、なんていうか、語彙力消失しちゃう作品です。そして、創作意欲をバリバリとかき立てられる愉しい作品でもあります。あと、甘酸っぱくてファンタジー部分がうまあじたっぷりで読み応え最後までたっぷりです!
端的に、凄まじい作品だと思う。もし私が感じた読者像を明言して薦めるなら「今、何かを目指している人」や「何かしたいけど、自分で何をしたいか分からない人」に是非読んで欲しい。多くを語る必要はない。ただ人生の中で数時間を、この素晴らしい作品に割くだけで人生を変えてくれるかもしれない。そんな力がこの小説のストーリーにはある。感想も含めて、作品の評価を読むか悩んでいる人の参考に文章力も構成力も、そういった部分だけを見れば物足りなさや改善点があるかもしれない。しかし作品全体を通して、小説として最も評価されるべき「読者に何を与えるか」という点からしてこの作品は私が今まで読んできた数々の作品の中で群を抜いて素晴らしい物だったと思う。読了時間は二時間から三時間程度。長すぎず、短すぎず。作品に込められたメッセージを伝えきるのにちょうど良い時間だと思う。これからも作者には頑張って欲しい