評価:★★★★☆ 3.5
慄英雄はゲームが好きだ。生活の一部といっても過言ではない。
ふいに手に取ったそのゲームの売りは『PCだけで『圧倒的な没入感』を得られる』ことであった。世にも有名な近未来SFにあるような、ある種ありふれたVRMMOにも似た没入感を。世にも珍しいシリアルナンバーが付されたPCゲーム「87人目の勇者候補」
広大なオープンワールドは『製作者の悪意』に満ち満ちた世界であった。
体力なんて繊細なパラメータは存在せず、あまりにも理不尽な『死』と隣り合わせのゲーム。お約束な中世の街並みがあればダンジョンもあり、空は飛べるし馬は地を駆ける。勿論、剣と魔法も使えるが、当たり前のようにモンスターも出るという。
そして彼がこのゲームで選んだ職はフリーターであった。しかし、キャラクターに自我を持たせたAIを搭載することで自らゲーム世界に変革をもたらせるという革新的なシステムは決して流行ることなく衰退した。運営陣は已む無くサービス終了を決定するが、自分達の世界の終焉を前にAI達は自ら『生き延びる術』を見出し実行に移す。
それはプレイヤーの眼を通してアクセスした『脳』同士で構築されたネットワークによる分散処理であった。プレイヤーを飽きさせないために与えられた自我は、やがて『プレイヤーを逃がさない』ために働くこととなる。
プレイヤーの網膜を通して現実世界に現れるモンスターたち。ゲーム世界と同様にプレイヤーの命を奪う為に襲い掛かる。
特別に高度なAIを与えられた一部のキャラたちは己が存在する意義に対して思考し、それぞれの判断に基づいて行動をすることになる。有り得そうな現実世界とAI・VRMMOの少しだけSF染みた世界観をそれぞれの視点で描くローファンタジー!
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:残酷な描写あり
★すげー笑った★ある意味、転生物やVRゲーム物のお約束的ポイントを尽くコケにして、しかもコレでもかとパロディ要素を怒涛のように突っ込みまくる。その執念と根性、誠に敬服する他はない。しかしただ笑い飛ばすだけではない、創作物語として根幹的な要素である『人間ドラマ』が丹念に描かれているのだ★主人公の慄を含め、登場する現実世界の人物たち。その彼らが現実世界での滑稽なくらいのドタバタがまず微笑ましいくらいに笑える。と同時に思わず同情したくなるほど現実味にあふれている。そして物語が仮想体験ゲームパートへと移動すると、現実世界の振る舞いとは全くかけ離れたプレイヤーキャラたちが所狭しと暴れまわる。時には身も蓋もないくらいに悲惨に、時には楽しく、まれにシリアスに★だがその現実とゲーム内の相互の関わり合いを追う内に物語に隠された謎がある事に気づくはずだ。そして作品のタイトルの意味を追わずにはいられないのだ!
最初に思ったことは斬新なあらすじ、ストーリーですね。まずそこに惹かれました。そしていざプロローグ、一話と読み進め文章の清潔さと言いましょうか、そういったものを感じ思わず「おお!?」と声に出して感服していました。これはどの方のレビューでも言っていることですが、私は心理、情景描写を意識して読むので当作品もそうさせていただきました。期待通りの文章でこれもまた「おお!?」と感服の声を出しました。おそらくプロットを入念に練っているか、もしくは改稿を重ねたうえで投稿していのかなと思いました。もしそうでなければこの作者の文才は確かなものです。