感情喰らいの少年弟子は、虚ろな姫君師匠を救いたい

喜びは病や傷を癒し、怒りは兵器や燃料に……感情の力を文明の糧とし、商取引の対象にもなっている世界。

少年フィール・エアメルトは、資源として有望な感情を捜す「感情採取人」の卵だ。他人の感情の匂いを感じ、食べて取り込む稀有な能力の持ち主でもあった。

仕事に活かせる反面、世の醜い感情の多さに人間不信気味。師匠であるクレム・フラジエの感情の一部を体内に入れ、心のバランスを取るほどだった。

一方のクレムはとある国の姫でもある採取人で、ある理由で国を救うため殆どの感情を売却し、売らずに済んだ感情も、心を病んだフィールを助けるため喪失していた。

腕はいいものの金銭感覚ゼロのクレム。万年金欠状態に、家計担当のフィールは疑念すら抱く。早く心を安定させてクレムから借りている感情を返し、仕事をやめたいとすら思っていた。

ある日、謎の組織から、三つのレアな「正の感情」を集めてほしいという依頼が舞いこむ。莫大な成功報酬を示され、２人は怪しみながらも引き受けたが……。