評価:★★★★☆ 4.2
山中の分校の高校生、タケシは謎の鳥マスク男「鳥の王シムルグ」に
恋人の少女ユウナの死を予告される。
一方ユウナの友人のマコトは悪魔メフィストフェレスから鳥の王の野望を聞かされ、
悪魔と共にその阻止に奔走するのだが……謎めいた映画『破壊の破壊』
音楽室から聞こえる、月光の第三楽章
徐々に鳥の王へ耽溺してゆくタケシ
マコトはユウナを救えるのか?誰もが経験して、誰も経験のない1週間がはじまる
なろうでは完結しました!
この作品は「ノベルアップ+」にも収録されています。
話数:全31話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
六月の晩、梅雨の晴れ間。少年にとって『つまらない』哲学めいた映画は彼を眠りへと誘う。心地よい微睡は非通知で鳴り響く一本の電話によって不快な覚醒を促す。異形、退廃、ある種のアーティストはそれらを表現する際に時に生々しく美しく、また生理的嫌悪感を思わせる作品を生み出す。それらが思春期における少年少女の多感な脳に与えるインパクトは計り知れない。傍から見れば奇行とも取られる言動は果たして内から発せられるものなのか、それとも外からもたらされたものなのか。霞がかった夢のような高校生活を『楽しむ』まるで御伽話の主人公でもあるかのように。と、まあ思う所は色々あるのですが、語り口が軽妙なんです。ちょこちょこ挟まれるワードがどれもセンスが良いから読んでいてニヤける。年代によっては生活に支障をきたすレベルで影響を受けるであろう作品です。それにしても山葵漬けが美味しそうなのですが……
一枚の絵画に描かれる世界の深淵を読み解くような小説。神秘主義的世界観への傾倒が強い高校生の日常に『鳥の王』という超自然の存在が介入し始め、人間関係から時の流れさえ混濁させてゆく物語。高校生らしいガジェットや小ネタも登場するがそれ以上に衒学的、抽象的な描写が多く読者の想像力よりも考察力に訴えかける内容で、決して万人向けとは言い難い。が、作中作『破壊の破壊』に関する設定など、細部にわたり丁寧(易しいということではない)な世界観の作りこみが為されていて、特に翻弄から反撃に出る中盤以降の展開は惹きつけられることだろう。補足説明的に挿入される『武井メモ』はこの作品を理解するうえで必須。じっくり読み解くのが好きな人には合っているだろう。