評価:★★★★☆ 4.2
会社勤めの底辺趣味作家・来栖は実家へ帰省する途中、見知らぬ森へ迷い込む。
日常から外れたその景色に困惑する彼のスマートフォンに、謎の人物から着信が入る。自分が異世界へ迷い込んでしまったと考える来栖を“異世界? そんなもん、あるわけねえだろ”と鼻で笑う電話の男。
さらに男は告げる。
“そこは異世界などではない。お前の脳内の空想の世界だ”と。男の言葉通り、やがて自らが考えた空想世界が来栖に牙を剥く。
その度に来栖は嘆くのだ。「誰だ! こんなクソ設定を考えたのは!」
現実への帰還を目指し奔走する来栖。
空想の旅の果てに彼が見るものとは……。–来栖の書いた作品メモ–
『ナイツオブサイドニア』
中世ヨーロッパ風のファンタジーな世界観。
騎士や魔術師が活躍する。
舞台はマリネリス大陸。『この森が生まれた朝に』
東南アジアのジャングル的、牧歌的世界観。
独自の術を操る呪術師が登場する。
舞台はプレアデス諸島。『機械仕掛けの女神』
核戦争によって滅んだ後の退廃的世界観。
銃やアンドロイドなどの機械兵器が登場する。
舞台はルサールカ人工島。
話数:全327話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
説明文を読むと異世界要素が薄いとか、コメディ調の作品に思えますが、実際にはまったく逆です!主人公の実体の脳に入り込んだ寄生虫との戦いが、作品世界での戦いという形で知覚されているという設定。主人公は作者として、「創作物」とは気持ちの上で一線を引いた付き合いをします。しかし、創作物のはずの登場人物や世界の描写はしっかりと、そして活き活きと描かれ、主人公と読者をだんだんと作品世界へと引き込んでいきます。読者が登場人物たちを理解するにつれ、主人公もリンクするように彼らに入れ込んでいくように感じられる点は秀逸。敵である寄生虫の化身による原作改変も出てきて、ストーリーも芯がしっかり通っています。ぜひご一読を。