評価:★★★★☆ 4.2
【2019/05/25 最終話にイメージイラストを追加しました】
貧民街に住む少女クーは、あやしげな男たちに追われていた貴族の少年、マティアスを助ける。
身分が違うことを知りながら、二人はすぐに親しくなり、やがて互いを想い合うようになる。五十年ぶりに「聖女」が選ばれる特別な日、マティアスがクーと交わした大切な約束を破ったことから、二人の運命が大きく狂い出す。
『私は二つの未来を夢にみる。一つは愛するあなたが死ぬ夢。もう一つは――――』
これは大切な人を守るために、残酷な夢をみる聖女と、運命にあやつられながらも、彼女を想い続ける青年の話。
セルバンテスさんでも公開
話数:全101話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
望外の喜びというものがある。このサイトで出会う小説で得られる喜びは、きっとこの程度だろうと、たかをくくった読み手の浅はかさをあざ笑うかのような、そんな喜びに出会う。まさに、この作品との出会いは、望外の喜び以外の何物でもなかった。内容には、触れずにいよう。最高の料理を供される前に味見をするバカはいない。最上の音楽会に行く前に音源を聴いて予習しては価値は半減だ。最初の一文字から、なんの事前知識もなく、ただ無心に、虚心に、物語の世界に入るのが、この物語への敬意。そもそもレビューとは、宣伝文句だ。はっきり言って、この物語の魅力を損なわないままそれを底上げする文章が書けるなら、小説なんぞ自分で書いている。とにかく、色々考えずに読んでほしい。ジャンルも何も気にせず、ただこの物語に触れてほしい。望外の喜び。あなたは、その手触りを知りたくはないですか?
冒頭に暗く重い雰囲気と硬めの文章で少々取っつきにくいイメージがありますが、土台の積み方や山場の作り方がとても丁寧に計算されており、読み進めるうちに舞台が整い一気に面白くなります。背景が少し入り組んでいて、評するなら大人向けの恋愛小説でしょうか。そろそろ第1章が終わろうとしていて、ヒロインを取り巻く環境も変化しつつあります。過去作も全て完結していてエタの心配もなく、更新ペースも安定しているので安心です。
人が人である限り、何らかの枷からは逃れられない。それは人によって違う。身分、血筋、しがらみ、あるいは――運命と呼ばれる何かであろうか。 クーという愛称で呼ばれる少女、クラリッサはただの浮浪児だった。そう、国王の庶子であるマティアスに会うまでは。 その出会いをきっかけに、クーは聖女への道を歩む。しかし権謀術数で満ちる王宮の生活は、彼女に茨の道を歩ませた。 チートではない。ご都合主義でもない。そしてハーレムでもない。 けれども、人々の欲望を掻き分けながら、クーは聖女としての役割を受け入れる。 仮に偽りの聖女であっても、それだけが彼女の想い人へ続く道だから。 そして開花する二つの未来を幻視させる能力とは、いずこへと二人を歩ませるのか。 繋いだ手は誰かの血で赤く染まって――それでも二人は手を離さない夢を視る。