評価:★★★★☆ 4
俺は野良猫である。訳あって夏目さんを探している。夏目さんというのは俺の餌やり当番をしている人間の女だ。一週間前から姿を見せなくなった。餌やり当番を何の断りもなく放棄するなどけしからん。だから俺はお仕置きをするために夏目さんを探すことにした。
これは猫の恋愛小説ではありません。
夏目さんというOLと、若干顔が怖い先輩の恋愛模様を、黒猫がこっそり観察しているだけのお話です。※第六回ネット小説大賞を受賞しました。書籍版が宝島社様より2019/05/10に発売されています。
話数:全22話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
この物語の作者はネコである。終始、ネコ視点で紡がれる人間模様は美しく哀しく、読み手を引き込ませる。出会う人々の強さと弱さと、そして優しさがネコを中心に織りなされる。その繊細な心理描写に、片時読み手も猫になって、主ネコ公の隣に座してしまうことだろう。一気に展開されていく物語にハラハラし、ドキドキする。読み終えたとき、もっとこの世界に滞在したくなる。普段見かけるネコに話しかけてしまう。そんな読者の期待に応えるべく、新たな物語が始まった。そして書籍化(書籍版には追加された物語が納められている!)との朗報。もう少しだけこの世界に延泊できそうだ。そして書籍を手に入れ本棚に納めた時には、お気に入りの宿泊先が1つ増えるのだ。この物語の作者はネコである。それは間違いない。そしてこの物語、ネコの世界は美しく優しい。
猫は探している。大切な食事、大切な寝床。心地良くしてくれる、たくさんのものたち。猫は自らの主であり、日々の暮らしを守る義務を果たす。そのためには、大切なものを大切にしなくてはならない。上から目線な語り口に感じても、それが猫の義務であり猫という存在そのものなのだ。そんな猫から語られる世界に、優しくて愛おしい人たちがいます。猫と関わる人たちの恋愛もありの(そちらがメインだとも思われます)、愛情深い物語にぜひ触れて欲しいと思います。書籍発売日のお知らせに、喜びのあまりレビューさせていただきました。