骨の王の物語 完結日:2011年4月25日 作者:酒井冬芽 評価:☆☆☆☆☆ 0大罪を犯し、電脳空間に拘置されることとなった一人の男の物語。※残酷な描写が繰り返しありますので、苦手な方はご遠慮ください。 話数:全10話 ジャンル:その他 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 注意:R15 残酷な描写あり なろうで小説を読む
自分には、こんな魅力的な文章も、こんな悲惨な物語も、綴ることができないと思わされた作品。 罪を犯した一人の男性は『収電特措法』という法律をその身体に受け、仮想空間へと飛ばされる。 そこから始まるのは驚くほどに人間臭い物語。一つ一つの工程が意味を成しており、殺戮に飢えた者たちの戦闘も繰り広げられるが、その戦闘はなんとも鈍重だ。しかしながら、鈍重である戦闘の中に魅力的なものが秘められてあったと感じてしまう。 罪を犯した彼という存在は、その仮想空間でも罪を犯してしまう。そこまでの道がとても味があり、とても惨酷だ。 僕にはまだこんな素晴らしい作品を紡ぐことも綴ることもできやしない。 十話という短くも読み応えがあるこの作品は語り尽くされないのがおかしいほどに素晴らしいという言葉が似合っている。 読んで見て欲しい。この一つの作品には、人間臭さが詰まっている。
魂とか自我とか人格とか――すなわち、《自分》についての物語。けれども小難しい話ではなく、さながらサクセスストーリーのようなテンポのよい話と、無駄のない文体で、とても気軽にあっさりと誘ってくれる。地獄の底のような泥沼へ。あるいは、自分でもわからない心の底へ。犯罪者から問題ある人格を取り出して更正させる『収電特措法』の適用された世界。データとして取り出された人格は、非合法にゲームのキャラクターとして払い下げられていた。別人格が大罪を犯したその男は、『収電特措法』で更正し、日常に戻るはずだった。しかし、ゲームの世界に囚われたのは《自分》の方だった。脆弱なスケルトンと化した彼は、知恵を駆使して生き残りながら、ゲームの世界で生きる意味すら求め始めるが……。作品の世界観も面白いけれど、それはあくまでテーマを際だたせる舞台装置。男が至る結末に、ちょっと我が身を振り返るも面白い。