評価:★★★★☆ 4.4
古くからの名家であるアシュレイ家は、音楽の才と美貌に恵まれる代わりに、成人後に音楽を生業とせず、音楽から離れるとむごい死を遂げるという呪いに悩まされていた。
アシュレイ家の最後の子供となったサラは、叔母と姉の葬儀の日に、隣のジョーンズワース家の次男、アーサーに出会う。
庭で一人で泣いていた自分に声をかけてくれたアーサーはいつも、見えないものを見るような不思議な眼差しで世界を見ていた。
「僕の一族もね、百年ものの呪いにかけられているんだよ」
そう微笑んだアーサーが、まるで呪いの成就を望んでいるように見えて、サラは、アシュレイ家の呪いに捕まるまでの残された時間をかけて、危なっかしい彼をこちら側に引き止める為に奮闘を始めた。
これは、ジョーンズワースの魔術師と呼ばれたアーサーと、そんなアーサーに恋をしたサラの物語。
話数:全35話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:R15
音楽に呪われた一族に生まれ最後の子供になったサラが出会ったのは、隣の家に住み、同じように呪われた家に生まれたアーサー。自分でも分からない不思議な世界の知識を持ち、こちら側での生活を息苦しく思うアーサーの危うさに、サラが呪いの手がかりとなる“橋の向こう側”の世界の謎を解いてゆくダークファンタジー。飼っていた猫が使い魔にされた王子だったり、橋の向こうには死者の国があったりと、古き良き時代の海外児童文学を彷彿とさせる設定に、溜め息を吐きたくなる程の圧倒的な風景描写と、心を揺さぶられる心理描写の筆力に呆然とさせられます。物語の32話、33話は圧巻。号泣必至の物語なので、人目も憚らずに泣ける環境で読んで下さい。橋の向こう側には、竜や魔物、妖精や精霊が暮らす不思議な世界があります。ただし、橋を渡る際には二度と戻れなくなるかもしれないので自己責任でどうぞ。心に残る小説です。
心が揺さぶられる、最高のボーイミーツガールの物語である。お洒落な西欧風の異世界から始まる物語では、穏やかなシーンや静かにぞわっとするシーン、くすりと微笑んでしまう軽快さや畳み掛ける怒涛の展開などに翻弄される。先が読めず、夢中で話の続きを読んでしまう。また、胸を打つような登場人物たちの言葉には、王道の陳腐な台詞は存在していない。何度でも違う気付きを与えてくれる、密度の高さがある。登場人物たちの魅力も恐ろしい。少女の成長、青年の苦悩、家族の絆に、悪役の愛情。そして何より、もさもさで足の短い優しい猫に出会える。時に落ち込み、悲しみ、勇気を持ち、笑い、慈しみ、信じ、信じられ、未来へ行く二人。残酷で優しい物語に、最後まで目を離せない。圧倒的な表現力で描かれたそんな素晴らしい物語に、どうか、もっとたくさんの人が出会えますように!32話が魂を抜かれるほどに凄まじいので是非!!!
呪われている、と言われている一族の少女と、呪われている、と思われる一族の青年の恋と呪いの行方の話。静けさと笑いと緊迫感のバランスが絶妙なのですが、とてもみっしりとした読み応えがあり、じっくり文章を読みたいという時にお勧めです。静謐な初夏の夜明けの庭から始まる物語は、場面場面を美しく描き出しつつ、惨めさ、不安、淡い思いといった心の織を見事にすくいあげて進み、冒険なのか事件なのかといった出来事も交え、どこに着地するのかさっぱり展開が読めずはらはらです。序盤の展開は静かですがとりあえず7話目までどうぞ。夏の夜や、過ぎ行く秋のあたり、圧倒されて息を詰めて文章を追うという経験をしました。