鉄騎王女は専属護衛を雇いたい

『動物と植物の国～アムジニア～』の第一王女である、メセティア・コウタールは悩んでいた。
自由な風と大地を駆ける駿馬に憧れる彼女は、第一王女としての利権を第二王女の妹に譲渡した。王家としての責任を放棄。多くの権益を失った代わりに、彼女は自由を手に入れたはずだった。
だが、彼女の父である王は愛娘メセティアが王宮を離れる事を良しとせず、『王宮を出たいのであれば。狼よりも強く。自分の事よりお前の事を考え。死も恐れない。最強の専属護衛を雇い入れよ』と王宮を出るための条件を示した。王家の利権を放棄した彼女にとって、父王の示した条件を満たすような護衛を探すことは難しい。
メセティアは募る世界への憧れを胸に抱いたまま、王宮での暮らしを余儀なくされた。

彼女が王家にいる存在価値はなくなったと思っていたのに、父王は翌日に控えた国家行事『成人の儀』には参列しろという。不貞腐れるメセティアだったが『もしかしたら、護衛にふさわしい者が見つかるかもしれませんよ』と、侍女に励まされ、渋々参列することにした。

『絶対に、父の条件より優れた護衛を雇って、一切の文句を言わせず旅にでてやる！』

メセティアは期待と諦めの入り混じった視線で、『成人の儀』に集まった若者たちを見つめる。
開催の合図と共に始まった、メセティアの専属護衛探し。
果たして、愛馬エイヤを駆る彼女の美しさと強さから『鉄騎王女』の異名で知られる少女の旅は始まるのか？