甲冑身に着けて廃墟脱出

　この日、平凡な十六歳の田舎娘の日常は大きく歪んだ。誰の仕業か知らないが、気が付くと見覚えのない廃墟で倒れていた。

　この施設……おそらくショッピングモールに違いない。

　起き上がろうとしたが、妙に自分の身体が重たい。疲れているのだろうか、そう思って目線を下ろすと全身が甲冑で覆われていた。着せた者の意図が全く理解できないが、後に装備の重要性に気付く。

　もしかして漫画とかでお馴染みの〝異世界〟って場所に迷い込んでしまった？

　というのも、この建物では敵意を持った怪現象が頻繁に起こるからだ。現代科学で解明できない事象は〝魔法〟と一括りされる事が多い。

　では、ここは異世界でいいのでは？

　しかし断言する自信が持てずにいた。それもそのはず。この建物、見覚えのある某会社の飲食店やブティック、自動販売機などのテナントが連立して設けられているからだ。あまりにも現実味があり過ぎる。

　現実か異世界か。そんなことは些細な問題に過ぎない。どちらにせよ、こんな陰気な場所からは一秒でも早く抜け出したいからだ。
　
　これは怪現象が頻発する廃墟モールから甲冑少女が脱出を企てる物語――。