評価:★★★★☆ 3.9
時は西暦2078年
人類最初の木星圏有人探査計画「エウロパ エンゲージ」は脆くも失敗に終わる
遠太陽系探査船「テーセウス」の船長タイヨウ・シラセ以下3人のクルーは全員死亡と断定される
残された遺族に対して「エウロパ エンゲージ」のプロジェクト責任者カールは驚くべき事実を告げる神の領域に達した人類に問いかける本物と偽物の近未来物語
話数:全11話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
【狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である】上記の論はイギリスの批評家であり随筆家、ギルバート・キース・チェスタトンの言葉であるが、このお話は正に私にそう感じさせた。死者が甦ることはありえないし、決してあってはならない……もしもその大前提が崩れる技術が産み出された時、この作品はそこに踏み込んでいる。そこでは社会はどうなるのか? それぞれの組織は? 当たり前の日々を営む個々人は?どこかで歪んだ世界の帳尻は合わせられなければならない。その帳尻合わせに巻き込まれた時、あなたならどうする? この作品はそういった問いを私たち読者に投げかけている。西暦2078年、人類最初の木星圏有人探査計画「エウロパ エンゲージ」は無残な失敗に終わった。そこから展開される奇妙で悍ましく、そしてやるせない世界で生きた人々の葛藤の記録、是非ともご一読ください
医療技術が低かった頃、人間は何かあれば簡単に死んでしまうものだった。「命は大切なものだ」とそんな頃から考えられてはいたが、それを実践するための手段は限られていた。その違いが価値観の違いとしても現れている。技術の進歩により様々な「できない」が「できる」に変わった結果、現代の人間は命を大切に扱えるようになり、それは結果として価値観の変化ももたらした。この作品は、死を克服するような技術が生まれ、しかしそれを使う人々の価値観は私たちのそれと大差ない、といった状況での話だ。できることに合っていない価値観が登場人物を、そして読者を悩ませる。価値観を技術に合わせられれば、その悩みからは開放される。作中の登場人物も、最終的にはそうせざるを得なかった。変化の加速した世界は、人の心を置き去りにしてしまうかもしれない。