暗闇の眼は陽の下に開く 完結日:2019年9月2日 作者:きしかわ せひろ 評価:★★★★☆ 4.2夏休みも終わりに近付いたある日、受験勉強の合間に病院へ祖母のお見舞いに行く。 エレベーターや屋上、僕の“眼”にはある現象が映る。それは真昼に視える“暗闇”の話。 話数:全5話 ジャンル:ホラー 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 エレベーター 受験生 屋上 暗闇 特殊能力 病院 注意:R15 残酷な描写あり なろうで小説を読む
首だけでなく、腕や足が骨格を無視して斜めに曲がって、捻れている……腕は関節がジグザグになっている……一話目からこれです。怖いです。エレベーターという奈落の底へと落ちた女の子……光の差さない暗闇の穴、そのような所へ落ちてしまえば……命はない。体中の骨という骨、関節という関節がバラバラになってもおかしくないだろう……しかし……もし、その女の子が生きているとしたら?一体どのような事態が考えられるのだろうか……
“本作に登場する「暗闇の眼」は、生者が決して――視ることも踏み込むこともできない、世界の境界のその先を覗くことができる。それは――””死””における、可能性の残滓を写し取る特殊な瞳。「暗闇の眼」を持つ主人公は、その力を以って一族に引き継がれる使命を果たしていく――という物語なのだが、この「暗闇の眼」の力が非常に特異で面白い作品となっている。あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、簡潔に私が感じたこの物語の本質を言うと――、【これは死を甘受するのではなく、生を尊重する――優しい物語である】と感じ取った。抽象的で分かりにくい、と思った御方。是非、それを形にするために、本作を読んでみてほしい。きっと読み終えた後、心に残る温もりを感じることができると思う。”
彼の血脈に、一世代おきに現れる能力者。彼等自身その能力を『暗闇の眼』と呼んでいる。彼等は見る。この世ならざるあやしい蠢きを。彼等は見る。助けを求めて手を伸ばす人を。彼等は決して、大層なことはしない。例えるのなら、すれ違った人が落とした財布を拾い、「財布、落ちましたよ」と声をかけるような。例えるのなら、風に飛ばされた帽子へ手を伸ばし、つかまえてあげるような。誰でもやっているような小さな親切。彼等の役割はそういう、ささやかな親切のようなもの。立ち上がり、生きて進むのは本人の力。でもささやかな親切は、弱っている人の心を一瞬、あたためる。その一瞬が……立ち上がる力に、なるだろう。