評価:★★★★☆ 4.2
メロの唄には不思議な力があった。
彼女が唄うと、空は天使の梯子がかかり、人々を励ます。
聞いたものは元気付けられ、笑顔になる。
その唄をいつも側で聞いていたのは幼なじみのディーンだった。しかし、二人が暮らす土地に領主の第三王子グランドールがやってきて、二人の穏やかな日々は一変した。
穏やかな少年は、小さな死神と呼ばれる兵士に。
勝ち気な少女は、唄歌いの聖女に。
血を憎む王子は、孤高の王に。自分を偽り、這いつくばりながらも手に入れたかった願い。それでも彼らは、運命に向かい、嘆き崩れ、戦い抜いた。
これは、歴史に残らない人々の戦記である。
ディーン編…5話。
メロ編……5話。
グランドール編……11話+頂きもの。※短編「聖女の励ましは今も生きている」の長編版になります。本筋は変わっておりません。ラストの変更もありませんが、途中のストーリーやセリフ、設定に変更があります。
※人はなぜ命をかけて戦うのか。理由を知りたくて書いています。普段は躊躇する残酷表現も、悲劇的な展開も、振り切って書いています。故に全体的に暗く痛々しいです。
※寝取られものではありませんが、誤解を招く表現があります。気になる方はご注意ください。
話数:全22話
ジャンル:エピック・ファンタジー 純文学
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:シリアス
展開:未登録
“まず、初めに……この作品で描かれている三者三様の””生き様””は、読者である私の心を大きく揺さぶるものでした。とある少年は、離れ離れになった愛する少女の元へと向かうため――多くのものを棄てて死神となった。とある少女は、遠く離れてもなお一途に駆けてくる少年のために――代償を孕む希望の唄を歌った。とある青年は、誰よりも優しいが故に全ての業を背負い、自我を棄て――語られざる偉大な礎となった。誰もが必死に生きている。護りたいもの、救いたいもの――そして愛するもののために。その形は人それぞれで、交わるものもあれば、相反するものもある……しかし、その根底にある想いが純粋であればあるほど、その命の輝きはとても美しく映るものだと――この作品で感じることができました。とても心に響く物語です。是非、皆様方も本作品を彩る3つの灯火が行きつく先を、見届けてみては如何でしょうか。”
この物語は、第3王子であるグランドールが一つの村に行ったことから始まります。そこで出会ったのは不思議な唄の力を持つメロ、彼女と思い合った幼馴染のディーン。人が戦争で死ぬのが当たり前の世界で、グランドールが願ったのは血を流すことのない優しい世界。グランドールの願いはメロとディーンを巻き込み、二人に悲しみを与え、グランドール自身も苦しみます。3人の立場で綴られた物語は簡単なものではなく、苦しみも悲しみも挫折もすべて抱え込んだ上にさらに前に進む思いの物語です。失った物は計り知れないけれど、悲しいばかりの結末ではありません。この運命の物語を是非とも読んでみてください。それぞれが戦い抜いた先に彼らが手にいれた光をきっと見ることができるでしょう。
何故、人は戦うのでしょうか。そして何と戦うのでしょうか。国のため?信仰のため?愛する人のため?きっと人によってその理由は正義であり、他から見たら悪意であり、狂気と呼ばれることもあるでしょう。それでも登場人物たちはそれぞれの心を傷付けながら、それぞれの戦いへと立ち向かっていきます。穏やかな少年は、小さな死神と呼ばれる兵士に。勝ち気な少女は、唄歌いの聖女に。血を憎む王子は、孤高の王に。(あらすじより抜粋)こちらの物語は以上三人の視点による三部構成。目線が違えば見え方も変わり、善と悪だけでは語れない心打たれる物語です。