通報式とは文字と数字を羅列した符号で、様々なデータを一定の規則に基づいて変換したものである。符号化するには思想が必要であり、通報式が共通に利用できれば、言葉や風土の異なる人々同士でも情報をやりとりすることが可能となる。通信が発達した時代になっても、その利便性は変わらない。これは、その通報式で世界が一つになれると信じた男の物語である。
西域の空港ホッタイトで働くシムナナムナは、空港の気象予測の充実を願っていた。そのために、独学で気象を学び、ササジー通信という独自の情報発信サイトの運営も行っていた。ある時、意を決したシムナナムナは、大都市オーギュシティにある世界交通機関までやってきて、空港における気象予測の充実を直訴する。
世界交通機関に所属するジェロという男がシムナナムナと面談した。シムナナムナの願いは必ずしも世界交通機関の機能とは一致しなかったが、シムナナムナはそれを理解しない。このため、シムナナムナは情熱が空回りしてしまい、ジェロがその要望に理解を示すことはなかった。
後日、国際交通機関で空港の統廃合プロジェクトが始まり、シムナナムナのいる空港は規模を縮小することになる。ジェロはその説明に現地のホッタイトを訪問して、そこでシムナナムナと再会した。その晩、二人は夜遅くまで話し込み、ジェロは次第にシムナナムナの考えに共鳴するようになる。しかし、プロジェクト自体は淡々と進んでいった。
ホッタイトの空港規模縮小によりシムナナムナは職を失ったが、ジェロの口ききでワンジュという都市で働くことになった。そこには廃港となった施設を利用した天文公園があり、昼間は公園内の喫茶店で働き、夜は天体観測をする生活をシムナナムナは始めた。また、ジェロ自身もシムナナムナと親しむうちに、オーギュシティの暮らしに疑問を感じるようになっていたため、仕事を辞めて同じ街に移り住んでいた。ワンジュの街で、シムナナムナは天気と天体のことばかり考えて暮らし、通報式の発信を続けた。ジェロはそんなシムナナムナとさらに親交を深めていく。
ある晩、二人の住むワンジュの街を過去にない規模の砂嵐が襲った。そこでシムナナムナとジェロは何をすべきか考えて行動をとる。未曾有の災害の被害がそれでなくなりはしなかったが、わずかな報いがそこにはあった。
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