評価:★★★★☆ 4.3
いつのまにか泥の底を這いずり生きるゲル状生物になっていた。
コミカルな印象はなく、濁った泥の中を腐肉を食らいながら生きる粘液状の生物に。
救われない姿。
けれど、底辺を這いずることに関してはあまり抵抗がなかった。むしろこうなってしまえばモラルも体面もないし自分以外との煩わしい関係もない。
ただ食らい、ただ生きる。他のことに腐心する必要がないことに自由を感じていた。
決して救えない生き物として生きるゲイル。濁った生涯の先に、彼が救われる日までの物語。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:ダンジョン
雰囲気:ダーク
展開:未登録
骨太なモンスター転生物です。 安易に人化することなく、万能すぎてもう人間じゃなくてもべつにいいのでは? と思うようなチートもありません。 主人公は言葉を発することも出来ず、意志表示すら困難なゲル状生物。うぞうぞと這い進むしか移動手段もなく、進路上の有機物を根こそぎ捕食する危険極まりない魔物です。 人との交流など絶望的な状況で、しかし主人公は一人の少女と心を通わせます。 流麗な文体で綴られたこの物語には、読み手の情動を呼び起こす熱量が存在します。 決して相容れない種族の壁に阻まれた両者の想いはとても切なく、悲しいです。 もし人の感情を揺り動かす創作物を芸術と定義するのであれば、この作品は間違いなく、それそのものではないでしょうか。 量産されたテンプレ物には食傷気味だ、という方は是非ご一読を。 この小説は確実に面白いです