評価:★★★★☆ 4.3
八十を越えたお婆ちゃんが自分が巫女をしていた神社でのできごとを語ります。できごとの舞台は1944年(昭和19年)東京。
史実ではありません。フィクションです。実在の神社とは全く関係ありません。太平洋戦争をやっと語れる時代になったような気がしています。実体験をされた方がいるぎりぎりの時期、実体験をした人々から直接話を聞いた世代が書き留めておくことも大切かな、などと思いました。若い世代があの時代を知るきっかけにでもなれば嬉しいです。悲しく重たいお話ではないのでご心配なく。語り口調です。
※ 秋月 忍 さま主催「和語り」企画 参加作品です。
話数:全5話
ジャンル:ヒューマンドラマ
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:昭和
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
【注意】~時代考察上現在不適切な表現もございます~国の繁栄と利権が絡むと人は鬼にもなる時代―――昭和19年、米軍が本土空襲を始める、―――40歳までもが赤紙をもらっている時分に―――なぜか、ご祈祷の依頼が増えたのです―――それも夜―――娘の初めてには日本の男を求めてしまうのが親そんな時代を本作は記録に残らない当時の人々のある種不問な思惑を綴ります。当時の営みの中の会話が、読者の皆様の心にこそ面白さを届けるかもしれません。冗長になりましたがお読みいただけると嬉しく存じます。
まず、この作品を読む上で、念頭に置かなければならないことがある。1、男尊女卑。2、神の下に軍がいて、その下に民がいる。大戦前後の貞操観念は、今と全然違い、現代の人には理解できない。女や子供の命より前線で戦う、戦力たる男の方が命の価値が優遇され、無理に貞操を奪われた女は、親に勘当されるような時代。処女が身を守る術は限られる。どれだけの男が女を大切に扱い、その人を思うことができただろうか?この作品の顔役は、その時代にいてほしかった、理想の男性の1つなのだ。そして、この作品は神社という、いわば神の領域で行われた出来事なのが、上手い仕掛けになっている。神に身を捧げるつもりで来た女が、神に内緒で人としての女のあり方を学ぶというのは、ある種の背きでもあり、密室で行われる情事を感じさせる。殺伐とした時代背景だからこそ、映えるロマンス作品!