評価:★★★★☆ 4.1
令和元年 8月5日 BKブックスより書籍化しました。
バウスフィールド伯爵家の長男であるジーンは、魔族との混血であったため、家から追放され賢者の塔という学術機関にいた。
だが、伯爵家の跡を継いだ腹違いの弟クレイグは、賢者の塔からもジーンを追放する。職を失ったジーンは、一代限りの貴族、騎士爵に任じられ、いまだ誰も開拓に成功したことがない危険な土地、スピーシの大森林開拓を命じられる。
何もかも失い、スピーシ大森林開拓に向かうジーン。
彼は、かつて命を救ったホムンクルスの少女ナオを連れ、未開の大地に挑むことになる。武器は圧倒的な知識と、オリジナル術式、手乗り図書館。
ジーン「こんなこともあろうかと、用意してあったのだ」ナオ「さすが先輩です!」
これは、元貴族の追放賢者ジーンによる開拓一代記。
※大体、17時~18時ころのアップになります。
話数:全170話
ジャンル:異世界ファンタジー
時代:未登録
舞台:未登録
その他要素
注意:残酷な描写あり
研究者という職業に、何か清廉な印象を抱いてはならない。連中は基本、自分の欲求を満たすために生きているのだ。しかも、そのためには手段を選ばない。手段を選んでいるように見えるのは、現状それ以外にやりようがないだけなのである。見よ、このジーンという研究者を。なにやら『賢者』などという肩書きを振りかざしてはいるが、コイツは己の欲望に正直過ぎる凡夫に過ぎない。だが、それでいい。研究者というものは、そういうものだ。それが、研究者というものなのだ。皆、ジーンとかいう『賢者』の後について行け。そうすれば、凡人であれば躊躇わずにはいられない道のりを追体験できる。しかも、罪の意識を伴わずにだ。よろしいか諸君。ジーンという男こそ、研究者のなかの研究者なのだ。
ストーリーは、魔族とのハーフである賢者ジーンがお家騒動により追放されて、辺境を開拓する物語。追放からのチート成り上がりものかな、と思って読み始めましたが、良い意味で裏切られました。主人公ジーンは賢者ですが、魔法的なチートは薄いです。世界観では賢者=研究者か科学者のような扱いであり、洞察力や考察の力で問題を解決していきます。異世界を舞台にした、冒険&探偵ものという印象です。皆が大騒ぎする大問題を理論的に解決していく主人公が痛快で、他の異世界作品と一線を画した魅力があります。作者様が狙ったのかはわかりませんが、ホームズで有名なコナン・ドイルの、冒険ものと探偵ものを異世界にもちこんだ印象をうけます。ドイルが好きな方は、ノスタルジーを覚えることまちがいなしです。字数制限で魅力が伝えきれないのが残念ですが、文章も上手く、一気に読めてしまいます。とてもおすすめです。