この人生に終止符を打ちたい

　幼い頃に父を亡くした松原隆司は、母一人、子一人、貧しい生活の中で育った。
　大学を卒業後、筋木商事に勤めた彼は、社長の一人娘、亜美と一緒になるが、社長である義父に認められたい一心から、犯罪すれすれのことをやりながら、企業買収に懸命だった。
　しかし、ある時、騙すようにして破産に追い込んだ相田工業の社長夫妻が亡くなったことを知って彼の時計は止まってしまった。
　ちょうどその頃、亜美は妊娠３か月という不安定な時期に、以前からの約束だからと言って、大学時代の仲間達と沖縄旅行に出かけ、帰りの機内で体調を崩し、不幸にも子供の命を失ってしまい、さらに医者からは、次の子供は期待できないかもしれないと残酷な宣告を受けてしまった。
　この二つの不幸な出来事によって、隆司は、抜け殻のようになってしまい、ただ流されるままに日々を生きていた。
　しかし、ふとしたことから、亡くなった相田夫妻の忘れ形見である相田沙也加と出会った彼は、時を重ねるごとに彼女に癒されている自分に気づき迷路をさまよってしまう。
　何とか罪滅ぼしをしたいと思い、あれこれと手を尽くす隆司であったが、一夜の迷いが彼女を抱いてしまうことになる。

　いつも沙也加に癒される隆司は、人生をやり直したいと考えるようになるが、隆司に終焉の足音が近づいていた。