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 過去を根に持つ方ではない碧は、良いことも悪いことも寝るとすっかり忘れてしまう。人を恨んだり深い妬みを抱いたりする人たちが苦しんでいるのを見るたびに、都合のいい性格だ、とつくづく感じていた。

 そんなある日、小学生の時に両親の都合で転校した親友の沙耶香が、大学進学を機に尼崎へと帰って来た。親友との再会を素直に喜ぶ碧だったが、沙耶香の口から不意に飛び出した「賢人」という名前に動揺してしまう。

 沙耶香が転校する数ヶ月前、急に転校した男の子が賢人だった。彼とはそれっきり会っていなかったのだが、碧は思うところがあり咄嗟に自分の性格を利用して覚えていないフリをしてしまう。だが、沙耶香は碧が小学生の時に彼のことを好きだったことを知っていた。
 かつてそうだったように、沙耶香は悪戯な笑みを浮かべて碧を追求する「照れてる?」、そう言われると隠すことは容易でない。沙耶香の悪意のないからかいは、碧にとって懐かしい過去そのものだった。

「賢人くんが、どこに引っ越したのか探してみない?」

 沙耶香が告げたその言葉がすべてのはじまりだった。引っ越しをしてから行方の分からなくなった賢人のことを探すうちに、互いの秘めた思いが徐々に交錯し始める。
 そして、過去には縛られないと思っていた碧もまた自分が過去に縛られていることを自覚していくのだった。

 懐かしい青春の思い出と切ない記憶に隠されていた悪意とは――――

※短期集中連載、毎日更新する予定です!

「LINEノベル」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「小説家になろう」同時掲載作品


話数:全31話
ジャンル:  

登場人物
主人公属性
職業・種族
  • 未登録

時代:
舞台:未登録
雰囲気:
展開:未登録

その他要素