リベラティオの翼　―槍が刻みし黙示録―

どんな時でも、おまえはひとりじゃない。だから、安心しろ。
　
幼き日、天使の翼を持つ男と交わした約束を胸に少年は神に遣える身となった。
　
神聖領パンデオラ。
聖職者見習いとして彼の地に住まうアンジェロ・ファリーナは、天使もうらやむ美貌と達者な口を武器に、悪徳商人から弱き人々のための寄付金を搾り取る日々を送っている。

秀麗な仮面の下に隠された傲岸不遜な性根を知るのは、愛猫ノッテをはじめとするごくごく少数。
外と内を巧みに使い分け、目下敵無しのアンジェロ。
だが、実のところ生まれた頃より唯一の肉親である兄と一度も会ったこともなければ、その正体について何も知らないという悩みを抱えていた。
　
己は一体何者なのか？
埒の明かない謎に燻る日々。
しかし、あるとき。
アンジェロは養育係の老爺ゴフレートから兄の危篤という一報を聞かされる。

愛猫の正体が実は下品でむさ苦しい男だったり。
父親の倫理観が完全崩壊していたり。
義姉には嫉妬から一方的に嫌われていたり。

兄の受難をきっかけに、まさに怒涛のごとく。
少年のアンジェロの運命が動きはじめる。