評価:★★★★★ 4.5
ユナは夢を見た。
いつから繰り返し見るようになったのは、金色の眸が印象的な、一頭の獣と対峙させられる夢だった。
声も出ない、音も聴こえない、においも感じない。
そんないつもの夢を見たある日、夢が変化した。
金色に輝く森の中、ひときわ目をひく大樹と一人の女性。
彼女は、自分のことを「ジェス」と呼ぶ――――。彼女は誰なのか。
自分が見る夢とは――。
時代:未登録
舞台:異世界
雰囲気:シリアス
展開:未登録
注意:全年齢対象
完結日:2011年11月9日
作者:樹杏サチ
まったく違う世界に存在するユナとジェスの物語が交互に展開されて、ジェスの悲恋の物語をユナが追体験することで、少しずつ二人と二つの世界の関係性が明らかになっていく……という物語構成がとても上手い作品でした。『小説家になろう』で初めて評価できる小説を読んだという感じです。僕はこの小説を読んで『銀河鉄道の夜』や『ネバーエンディングストーリー』(←映画のほう)を連想しました。自己を肯定できない少年が、物語や旅を通じて自己を肯定できるようになる、というのは物語の基本的な作りの一つで、それだけに作品に力強さを与えるものです。今作の場合も、最初は頼りなかったユナがジェスの物語を通じて、最後には自分を認めるところに大きな感動があると思いました。キャラクターもそれぞれ書き分けが出来ていて、敵役も単純な人物として描いていないところも良かったと思います。白夜のラナトゥーンの世界観も良かったです。