評価:★★★★☆ 4.1

 鈴が鳴っている。それを忘れる筈なんてなかった。
 忽然と消えてしまった好きだった人。残されたのは『紫の空』という謎だけだった。
 きっと守るからと鈴に約束を懸け、きっと見つけると願う今、けれど、血で染まった少女が笑う。
 それは見たくない光景。瞼を閉じて閉ざしたい瞬間。でも、鈴が鳴り響いている。好きだった彼女に渡し、一緒に消えた鈴が、此処にいるよと、ちりんと鳴り響く。
 守ると約束した筈なのに守れない。見つけると約束したのに、既に果てた美で笑う。
 どうしようもない擦れ違いの物語。赤く染まった華は、そこにあった。
 これは涙で作られた鈴と、血で汚れた夢のお話し。
 どうしても許せない自分と、自分より大切なダレカの物語。
 学園の日々は過ぎて行く。日常は通り過ぎて、くるくる回った。そして、あの人はもういない。
 欠落として抱く果てに、夢は散った。
 残された匂いは過去を思わせる金木犀のもの。けれど、それさえも現実を侵食していく。
 もう居ない。もうないのだと。


話数:全33話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
  • 未登録
職業・種族
  • 未登録

時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

注意:全年齢対象