評価:★★★★★ 4.5
「この中に、あなたたちをここへ閉じ込めた“アリス”がいる」
高校生・吉野泰介はある朝クラスメイトの訃報を受けて早朝の教室へ向かうが、集まった生徒は幼馴染の佐伯葵に、一匹狼の仁科要平だけだった。
そこへ突如現れた見知らぬ少女の言葉を皮切りに、佐伯葵は謎の失踪を遂げてしまう。
少女の意図さえ分からないまま、仲間の命を懸けた“ゲーム”の幕が開けた。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:学園
雰囲気:シリアス
展開:未登録
注意:R15
この小説を読んでいる時、私は何度も何度も「酔っている」感覚を持った。「陶酔」の意では無い。乗り物酔いや人混み酔いのような、脳が直接揺らされる感覚である。重厚で骨太な文章が生み出す、圧倒的な臨場感。飴細工のようにもろく、鋭いようでどこか鈍らな少年少女の焦燥と葛藤、そして恋愛模様。二転三転する状況と舞台と時間。その全てを「読ませる」、作者様の気迫すら感じる筆力。そして終盤、最果てですべてをひっくり返す『アリス』の真実。一から十まで何らかの形で「死」と向き合う題材の重さに、ここまでの疾走感を与えることの出来る技量は半端ではない。これからこの小説を読む方は、じっくりと腰を据えて、登場人物の一挙一動に気を配りながら、物語を追ってほしい。心地よく脳を揺らされる感覚を味わう頃には、おそらくすべての予想を作者様にブチ壊されていることを保証しよう。そして、その先にある酔い以上の清々しさも。