ファンタジー世界で学ぶ簿記！

ファンタジーの世界で簿記を学ぶ。この切り口は私にとって斬新であった。登場キャラクターが簿記の解説を読み手にしてくれる、教本の類ではない。主人公が講義を受ける、それを読者は傍観している。れっきとした小説なのである。読むにあたってなんか難しそう、などと気負う必要は無い。ぶっちゃけ簿記の講義内容がチンプンカンプンでも充分面白い。簿記という日常生活ではあまり馴染みのない学問に、思わず興味惹かれる人も絶対いるはずだ。こんな小説が教科書だったら良かったのに。勉強嫌いの学生だって減るのではないだろうか。……ダメだ、小説としての展開が面白すぎて、続きを早く読みたいあまり難しいところは読み飛ばしてしまうかも知れない……

やる気がないわけではない。でも何を成したいかわからない。そんな貴族の三男坊は街角で『勇者様に学ぶ簿記』なる怪しげ（？）な講座を発見する。　かつて活躍した偉大な英雄が、わずかな元手から事業を起こし、私兵団を結成して魔王を討つまでをお金のやり取りから描く講座であった。　その講義を担当するのは失恋の傷を負う美しい娘。講義に参加するのは跡継ぎの期待をされていない夢見る少女。　勇者の軌跡を追いながら進む講義はやがて三人の恋心を育てていく。消えた金物屋を追って講義は一時休講するも、恋の講義は続行中。果たしてその教師は一体誰？　勇者さんがとってもいい性格の持ち主です。本人がいないのに強烈なキャラでグイグイ簿記の知識と興味が沸いてきます。おすすめです。