評価:★★★★☆ 4.4
姫と道化師が恋に落ちた。身分差の恋を深めていく二人。
道化師は姫と結ばれるため、試練を乗り越えていく。
幻想世界を作り上げる魔術道化師のライモ・フリッグは、少年の頃よりヘレナ姫に仕えていた。
母がいないヘレナ姫の寂しさを癒すライモ。彼もまた、両親に恵まれない不遇の子供時代だった。
同じ寂しさを埋めあい、生きることを支えあう二人は、結ばれることを疑わなかった。
道化師のライモは王を目指す。※「17歳の横顔」の挿絵はyamayuriさんに描いて頂きました。
※10/12序章の一ページ分が長すぎたので三回に分けました。内容の変更はありません。
※「のべぶろ!」にも投稿しています。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:ハッピーエンド
注意:全年齢対象
良いものは紹介したい。その思いからレビューを書きます。この良作が多くの人の目に触れることを願います。私たちはなぜ物語を読むのでしょうか。それはこの作品を読めば理解が進むはずです。人と人が出会い、想い、結ばれます。当たりまえのことを、当たりまえに物語ります。少年と少女は出会い、当たりまえのように恋に落ちました。彼らの生い立ち、精神、ふるまい、それらはキャラクターが高度に「生きている」良作です。ネット小説という多くの玉石の中で、珠玉を見つけた思いです。読んだ後にあなたは胸が満たされるはずです。
私は元来、自作にも他の方の作品にも厳しい目を向けている。真剣に、作品の質を測ろうとする目は、時に冷酷なくらいだ。『龍の髭とライラック』は異色で、私の中の冷酷を流し、包み、温もりを与えるかのような作品だ。主人公の少年、ライモ・フリッグにも似ている。姫と恋に落ちた道化師は多くを持たない。過去の傷を抱えながら、彼の手にあるのは魔力と、優しさと、澄んだ誠実さ。それだけ。それだけでも「生きていて、良かった」と言える瞬間は訪れるのだ。ヘレナ姫の父王と、ライモの親代わりであるサーカス団長ゴーファンの、子を想う親同士の絆には、胸が熱くなる。大団円を迎えたあともライモの試練は続く。しかし隣には、愛する女性。きっと彼は何度でも「生きていて、良かった」と思うだろう。作者の人柄を想わせる心優しい少年に、紫色のライラックの花束を、言祝ぎとして贈りたい。君は、幸せの道をゆく。