ハードボイルドウイザード

主人公は異世界でチートになって、ハーレムを造って大冒険。テンプレでしょ？でも違うんです。主人公は異世界で初めて会った女の人をＨな催眠術で洗脳して。鬼畜でしょ？でも違うんです。何も考えないで読んだり、主人公に偏見を持つとそんな話に感じます。でも、読み方を変えると、仮想世界に囚われた孤独なヒーローが同じように世界に囚われた人々を助けようとする話になります。姿のない悪は主人公がヒーローとは知りません。知られれば、無防備な主人公の体は破壊されるでしょう。特別な力を持った主人公が死ねば、囚われた人達はそれまでです。だから一見ひどい事を主人公はしなければいけません。でも、そんな中でも主人公は自分を正当化しません。正義の為と言ってしまえば楽なのに。できる限り、悪に染まらないように頑張ります。悪だと開き直れば楽なのに。ただ何が正しいのかを考え続け戦います。

　古臭さを感じさせ、チートやハーレム、それとＭＭＯについて冒頭から語ってくれるのでとてもわかりやすい。こうやって、世の中について語ってくれる作者というのも、あまりいないのでいろいろと共感できることが多い。　これは注意書きに子供は読まないほうがいい、と書いてあるがまさしくそのとおりだ。濡れ場はエロチックで、それなりにしめる。ハーレムを築き上げていく主人公も、それはそれですごい。　辛口という方法で物語を描いていくこの小説は、世の中についてばっさりと切り捨て、そして正論と裏のことを次々と語る。哲学についても語るので、興味ある方はどうぞ。

以前この作品を吼えろペン10巻の「星のところへ行こうか！同志よ！」に出てくる作中作を思わせると書いたことがあるこれは作中作なので内容についてのレビューではない、との指摘があったので触れてみようだがこれが実に難しい。字数制限のせいで語りきれないほど深いのだ「鈴木先生」という漫画のような手法。「敵は海賊」の神林長平を思わせるメタバタドラマの「２４」などの米国産ハードボイルドのパロディのような主人公。　ゲーム「STEINS;GATE」のような世界観「規制による小説家らしさ」の否定と「創作」の社会的意義への問いそれらを、異世界、最強、ハーレム、ＶＲＭＭＯといった今時の物語に組み込み、お色気シーンといったサービスも忘れていないこれはネット小説でこそできるといったものの一つ一言で言えば「規格外」または「常識破り」の作品だ

多くの作品の中でこれほど意欲的な媚びた処のない作品もないであろう。まず多面的な物語の構成。多くの人間が読むであろうことを理解し自らが書きたい主題を明確に打ち出す試み。論理や哲学に対する一家言。小説というものが何であるのかを初めとする読者に対する問いかけ。それを有りがちな主題に対するアンチテーゼであるかのように、テンプレと呼ばれる物語展開の中に組み込んだ作品は賛否両論あるだろうが快作であると思う。ただ誤解されやすい場面や濡れ場があるので注意書きに従い、子供や影響を受けやすい人間は読まぬほうが良いだろう。