評価:★★★★☆ 4
大陸を二分する帝国と教国による帝教共立魔術学院。
レプスは農民出身でありながら、生真面目さと強化という稀有な属性が認められ上の組へと繰り上がることになった。
少年はそこで霊銀の髪を持つ小国の姫と出会う。
彼らが十三才の春のことであった。――戦闘魔法あり、恋愛甘め、雰囲気暗め重めの欲張りファンタジー学園ものです。
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:異世界
雰囲気:未登録
展開:ハッピーエンド
完結日:2014年3月7日
作者:カワズ
非常に安定した筆致で描かれる「世界」は、単なる学園ものにとどまることのない広がりを見せています。王道のファンタジーであり、一種の戦記でもあり、幾つもの思いが交錯する恋愛小説でもあります。そして、その全てがハイクオリティ。二つの国が共同で設立した「学院」という特殊な環境を舞台にした農民の子と王女の恋物語を軸としながらも、それを取り巻く国同士の駆け引きや脇役の活躍も描ききり、ラストまで勢いを落とすことなく走りきります。完結済みなので、その点も安心です。主人公やヒロインの親友達も魅力的なキャラばかり。各国の文化など細部の設定もよく練られており、伏線回収も鮮やか。戦闘シーンの臨場感にも全く不満なし。――これを読まない手がありますか?
まず、世界観がもの凄いです。本編では語られない部分をもし小説にすれば、同じくらい、いやそれ以上の文量となるのではないでしょうか。 いくつもの系統に分けられた魔術。 教国や帝国、王国に商業都市にその他様々な国家・地域。本編開始時点では既に滅びた皇国。 淀んだ魔力を帯びた獣、すなわち魔獣。神格化された魔獣である神獣。 ファンタジー好きにはたまらないこれらの設定は、「読ませる文章」によりワクワクしながら読み進められます。 そしてその重厚な基礎のうえで語られるのは、どの国にも属さない学園で出逢った、農民の倅と王女の物語。 主人公の親友たちにも注目です。彼らが主役の小説があっても不思議ではないほどに魅力のあるキャラクター達です。 豊富な語彙をもって描かれるストーリーは読み応え抜群です。完結しているので、最後まで安心して読むことができると思います。 是非、ご一読ください。
一人の少年をめぐって、彼を振り向かせようとする少女たちと初々しい彼の姿がとても可愛らしい。と読みながらそんなことを思い、しかし少年が成長していく姿はなかなかいい。 これまで塞ぎこんでいた少女も彼をきっかけに変わろうとする上に、姫の資格を捨てるように王位継承まであきらめてしまう。 世界観、ファンタジーならではの自然な風景、魔法。 どれもいいです。 さらに+aとして語られる物語は少年ではなく、彼の周りについて語られるので……読むべし。
“13才の男女を中心とした青春物語。しかし、異世界の青春は全てが違う。 身分、魔術、国の伝統と風土……。ありがちな日本の高校を異世界に””置き換えただけ””の学園ものとは違う。世界が息をしていて、学生たちが抱える悩みは非現実的でありながら現実的。そんな彼らの青春はとても苦い。 異世界だけの成長期と思春期を書き上げ、主人公たちが結ばれるまで表現した筆力は素晴らしい。さらに書きためてから一気に投稿するスタイルが上手な伏線消化を可能にしている。読み込めば読み込むほどその練り上げられた恐ろしい完成度が分かる作品。熱意のほどは作者さんの感想の返信からも感じられる。 成長したあとの””二人だからこその戦闘””は圧巻、ぜひ一気に読んでください。”
少年少女の織りなす青春の学園ファンタジー作品。細部まで書き込まれた世界設定に、少年コミックスのような軽快なテンポと、際立つキャラクターたちが織りなす群像劇が魅力的な一品。貴族の子供と庶民の交流や、思惑が絡む政治情勢がありながら生臭さはあまり感じませんが、そこがヒロイックな仕上がりになっていてとても読みやすいです。作風から開放的で自由な雰囲気が感じられるなかで、魔法使いは大衆にとって畏怖の対象である前提があり、子供たちはどこか打算的で大人びています。これはそんな子供たちがどこまで自分の感情をまっすぐ伝える為に、大人に反抗的にではなく正攻法で挑む王道の物語です。
学園ものでここまで作り込まれた世界観や設定には憧憬の念を抱きます。ストーリー構成や文体もしっかりしており、丁寧な筆致でした。話は当然の如く面白く、引き込まれるものがあります。本筋だけではなく、+aなどの番外編ではサブキャラクターに焦点を当てていたりと、補完もされているため、どこまでも作り込まれた話に脱帽です。
べた褒めするつもりはない。稚拙な点は見受けられるし、独自性に満ちているとも言い難いからだ。ただ、近頃のランキングは、チート系ファンタジーばかりだ。例えるならアクション大作しか並んでいないTSUTAYAをみたいなものだ。しかし、コマンドーのシュワちゃんを見たらテルマエの阿部ちゃんも見たくなるのが人間である。そんな中、学園ジャンルでランキングに顔を出したこの作品を讃えたい。見飽きたギルドなどの単語で誤魔化さない創作活動への姿勢は評価したい。作者さんは世界観を読んでもらうために、言葉を、文章を、構成を丁寧に選んでいる。ガリ版コピーには含まれない、創作活動への魅力である。会員登録もせず長年ROMに徹していた私がついレビュー(応援)してしまうほどだ。不躾なことに作品に関係のない駄文を書いてしまったが、これからが楽しみな作品であることは間違いない。