現代の日本。恵は高校卒業後、家計を助けるために日々アルバイトに勤しんでいる。平凡で変化は少ないが、充実した毎日だった。
ある日、勤め先である雑貨屋に章吾が訪れる。このとき章吾は女性を連れている。
はしゃぐ彼女の半歩後ろで、つまらなそうにしている章吾に目を奪われる恵。思い切って話しかける。
「そのうちどうでもよくなって捨てる物に、どうしてそんなに執着するのかわからない」と章吾。
どんなものであれ、物にはそれぞれ大切な思いがつまっており、とても捨てるなんて考えられない恵に対し、物につまった思いなんていざというとき自分の足を引っ張るだけで、捨てずにとっておくなんてもってのほかだ、と章吾は言う。
反射的に反論するが、自分とは真逆の思想を持つ章吾にはまったく相手にされず、軽い絶望感すら抱く。
数日後。もうひとつのアルバイト先であるファミレスに、友人らしき男数人に混ざって章吾が店に訪れる。
恵はすぐに気づくが、どうせ向こうは覚えていないだろうと高をくくっていつも通り接客する。しかし章吾も覚えていた。
休憩時間、言われた通り店の前に出ると章吾が待っている。開口一番謝罪する章吾。
どういうことかと恵は焦るが、話していくうちに章吾の誠実で男らしい面を垣間見る。加えて、以前一緒だった女性は姉だと知る。
雑貨屋で初めて会ったときから、章吾は恵のことが気になっていたという。しかし、その「気になっていた」の意味が恋愛感情なのか、単なる興味なのか、恵はわからない。よかったら、と求めてきた章吾におずおずと連絡先を教える。
翌日以降、章吾とメールや電話のやり取りをしていくうちに、自分が章吾のことを意識し始めていることに気付く恵。ただ、それが恋愛感情だとは認めたくなかった。
仮につきあうということになっても、きっと解り合えないだろう、と恵は思っていたからだ。
そんななか、章吾から正式に告白をされる。いつかは言われるだろうと覚悟はしていたものの、数日間思い悩む。
悩みに悩み抜き、出した答えは「あなたとはつきあえない」。
以降、章吾からの連絡はぱったりと途絶える。恋愛対象として惜しいとは思わなかったが、友人としてつきあえたらと思う気持ちは拭い去れなかった。
- 未登録
- 未登録