評価:★★★★☆ 4
地球から植民して七百年の時が過ぎた惑星ファルファーレ。そこには超常能力を持つ者たちがひっそりと暮らす島がある。
ある日惑星を襲った災禍を機に、ファルファーレの社会は少しずつ変わり始めた。
超能力を持つ集団を、それを持たない人々の社会は受け入れることができるのだろうか?
それとも決裂しかないのか?
惑星と島の命運をかけて社会と融和しようと苦闘する能力者の少年と、彼らを受け入れるべく力を尽くす若い海軍士官を中心にした群像劇。全四章
話数:全44話
ジャンル:SF
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:シリアス
展開:未登録
注意:R15
地球外惑星への移民、超能力者、そして冒頭から天地《あめつち》を揺るがす流星の災禍。実にSFらしい超現実的な世界を舞台に描かれているのは、しっかりと地に足をつけた人々の姿です。 三百年に亘って、ちから持たざる者と隔絶して暮らしてきた孤島コラム・ソルの住民達の、独自の価値観や暮らしぶりにとても興味が惹かれました。同時に、そこから足を踏み出そうとする少年サッタールの姿にも。 幾つもの思惑が入り乱れる中、サッタールに忍び寄る魔の手とは。ちからの有無は勿論、歴史や文化、立場の違いを超えて、彼らは互いを受け入れることができるのか。読み応えたっぷりな物語です。
彗星が三百年の周期で惑星をかすめていく。その惑星は月面基地を設立できる程の科学技術と、唯一の平和憲章を四大陸で共有できる程の文明を有していた。一方その今に達する数百年の過程で体制側から離れていった異種の人々、力で虐げられた弱い人々、歴史の闇を背負わされた者達もいて――立場の違い、能力の差という溝を越えて人間達が共同していく道を探ろうと足掻き、もがく物語。そこには確かに冷たい現実が横たわる。けれどそれ以上に人が持つ温度みたいなものが強く書き込まれている。読み進めていくうちにじん、としてきた目頭を押さえつつも『あれ? みんな違うといえば違うし、同じといえば同じなのか?』なんてことを考えさせられてしまった。最初の二話は地名が幾つか出てくるので戸惑うかもだが地図も載っているし、そこを過ぎた後は物語が面白いので勝手に頭に入っていくかと。超常の切口、登場人物の魅力も秀逸。是非お勧めしたい。
優しい人々と穏やかな暮らしを守りたかった。暗く閉ざされた未来を照らす、ささやかな希望の光が欲しかった。遮るものの無い、広い世界に吹く風を感じたかった──人の心を読み、操る力を持つ少年は、その能力ゆえに歳に似合わぬ自制心を持ち、思慮深く、理知的で、しかし同時に広い世界への若者らしい憧れと激情、己の力への葛藤を内に秘めていた。愛する者達と自身の未来を賭けて、争乱の渦中に踏み込んでゆく少年。軍人でありながら、子供のような純粋さで少年を守ろうとする青年。「能力者」を巡る理想と現実、絡みあう政治的思惑、恐怖、敵意、欲望、陰謀、そして温かな笑顔と差し伸べられる手……星の雨が降る海で、彗星の巡りと共に人間のおぞましい歴史は繰り返されるのだろうか。SFという枠を遙かに超えて、壮大な宇宙を舞台に鮮やかな筆致で人の心の機微を描き切った物語は、一度読み出せばのめり込まずにはいられない。