評価:★★★★☆ 4.2
声にも雑音にもなりきらない、中途半端な、俺の音≪iVoise≫。漂うばかりの旋律。
歌唱人形と揶揄されるマイペース男子が出会ったのは、音を失くしたピアニスト。……静寂の邂逅は、やがて音の奔流をうみだす。風前の灯でも、燃えていた。生きていた。その音は、まだ。
きっと、――届かせて、みせる。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
完結日:2014年4月30日
作者:本宮愁
声にも雑音にもなりきらない、中途半端な、俺の音≪iVoise≫。漂うばかりの旋律。
歌唱人形と揶揄されるマイペース男子が出会ったのは、音を失くしたピアニスト。……静寂の邂逅は、やがて音の奔流をうみだす。風前の灯でも、燃えていた。生きていた。その音は、まだ。
きっと、――届かせて、みせる。
この作品を読んで、私の心は思わず揺さぶられた。私から見た音波はとても人間らしいです。彼の心の叫びは、格好良く飾られることのない人間らしいものです。人間らしいからこそ、飾られないからこそ、歪むことなく私の胸に突き刺さった。読む人によっては、歌というものを使って綺麗に飾りつけたように感じるかもしれない。だけど、私はこの作品の読者に感じ取ってほしい。この作品に込められた音波の叫びを。そして、作者である本宮愁さんがこの作品に込めた叫びを。ただ表面を読むだけではなく、その内に隠されている叫びに気付いてほしい。読み終わったあなたに――内に隠された叫びに気付きましたか?と、私は訊ねたい。
この作品のレビューを書くにあたって、内容を書くことはしない。それは作品の字数が少ないからだとかそんなことではなく、ストーリーについて真っ白な状態で読んでほしいからだ。ここで伝えたいのは、表面をなぞるだけではこの作品の本当の意味はわからないということだ。最後のあとがきに至るまで、作者は茶目っ気を混ぜながら歌い上げてみせた。最後まで読んでそれに気づいたとき、私は思わず唸った。書き手である者にこそ読んでほしい。本宮愁が叫ぶ作品への愛のVoiceを、Noiseとするのはあまりにもったいない。書き手であるならば、理解できるはずである。そして読み終わったとき、思わずこう思うだろう。――次に歌うのは、私たちだ。