評価:★★★★☆ 4.3
『水面の月を抱く国』の続編です。
銀色の瞳の楽師がオドナス王国に留まって二年、王都の人々は変わらぬ繁栄を享受している。王宮では平穏な日々が続いているように見えて、変化は少しずつ始まっていた。属国の王子ナタレは正式に国王侍従として勤め、王女リリンスは西方アートディアス帝国への輿入れが決まりつつある。そしてついに、国王による王太子の指名が行われることになった。様々な人々の思いを孕んで、王国の運命がゆっくりと動き始めた。悲劇の予兆をかすかに漂わせながら。
話数:全80話
ジャンル:異世界ファンタジー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
広大な砂漠を支配するオドナス王国。月の神に守られ、豊かな湖を抱くその国に、銀色の瞳の楽師がやって来た。謎の美しい楽師と、王宮の人々が繰りひろげる、大河ファンタジー。『水面の月を抱く国』、『幕間劇「追想」』、そして本作『微睡む流砂の遺産』と続くシリーズです。全編、続けて読ませて頂きました。少年と少女の成長と恋愛、王朝の愛憎劇、王位継承に纏わるお家騒動、人質と被支配民族の反乱、戦争、遠未来SFに繋がるオーバーテクノロジー、擬生命体……美味しい要素がたくさん詰め込まれたお話で、まるで豪華なフルコースを頂いている気分でした。登場人物ひとりひとりが個性的で、飽きません。細部までつくりこまれた世界設定も魅力です。砂漠を舞台にしたファンタジー、王朝恋愛ものがお好きな方に、お薦めします。
ページをめくる手が止まらなくなる、読み終えたあとに、じっくりと余韻に浸れる……そんな小説を読みたいのなら、こちらをお勧めいたします。前作「水面の月を抱く国」から大きく引かれている伏線、読者を飽きさせないように練られた展開、数ページであっという間にオドナス王国に引き込まれてしまいます。キャラクターたちの生の命の物語がこれでもか、これでもかと押し寄せ、スタートからエンディングまで圧巻の筆力で押し流されてしまうでしょう。話の展開もさることながら、息遣いまで聞こえてきそうなキャラクターのリアルな内面にもいつの間にか巻き込まれていきます。綺麗事では為しえない夢、誰かに固執してやまない欲望……そんな彼らに感じるのは、捨てがたい愛おしさ。天使の目線で彼らの物語を見つめてみませんか。