評価:★★★★☆ 4.2
北仏の海岸に浮かぶ半人工島、サン=ロレ島。それは国際共同科学教育機関ISLE(アイル)が作り上げた英知の砦だ。
日本からの国費留学生として付設の学園に編入された皆川千尋(みながわ・ちひろ)は到着初日、謎の超常災害『STORM』に巻き込まれる。異形の怪物に変貌した同期生に捕食されかけた彼女を救ったのは、銀の仮面に素顔を隠す赤い肌の超人――三年前の『STORM』でISLEの学籍を失った男、不破崇(ふわ・たかし)だった。
島に隠された秘密と陰謀を追い、二人の戦いが始まる。この作品はフィクションであり実在の人物や団体、事件などとは関係がありません。また、科学的な記述については必ずしも正確なものでない場合があります。
話数:全31話
雰囲気:シリアス
展開:未登録
彼は帰ってきた。三年前の因縁と、その謎と取り組み、決着をつけるために。 STORM。半人工島に起こる異常事態。 人が人でなくなり、人間性を喪失してしまうその瞬間。 彼は戦う。自らを狂わせた、忌まわしいほどの力を用いて、異形の戦士となって。 だがこの物語の舞台ISLEでは彼一人の力ではどうにもならぬ陰謀と人知の及ばぬ謎が複雑に入り組み、彼を取り巻く大勢の人間の運命を揺り動かしている。 人が人でなくなる瞬間。STORM。 その恐怖、しかしそれに抗う人間の戦い。 そして、緊張に反して緩やかに醸し出される微笑ましい一幕。 どれもが人間の人間たる営みだ。 各々の想いは錯綜し、陰謀と絡み合い、奮闘した挙げ句に一つのヴィジョンに昇華する。 曰く、人間とは何なのか? 人間の定義は曖昧なのではないか? その問いにぶつかれ。だが怖れるな。答えは読めば見つかるのだから。
『学園』というタイトルがついていると一見、学園ミステリーかと思わせる。しかしこの作品は、国際的規模の陰謀とアクション、友情と恋愛、そして厳しい近未来の社会を背景にした紛れもない空想科学小説である。作者の持つ豊富な知識は物語の中に昇華され、淀みのなく語られる展開は、読み手を惹きつけるに違いない。突きつけられる謎と生死を分ける戦いの中で、人間とは何かを真摯に問いかけてくる。それでいて息もつかせぬ展開の中に、ホッと息を抜く場面があるのも作者の人を見る目の暖かさを感じる。SFが好きな方にも、アクションが好きな方にも、文字を追って想像の羽を広げることの好きな全ての方にお勧めする。そして改めて【人間】とはなんなのか、それぞれに考えてしまうのではないかと思う。
なろうファンタジーに金字塔を打ち立てた『ばいめた!~楽師トールの物語(サガ)~』の作者様の作品。簡単にいうならば、ミステリー要素あり、ロボットあり、美少女あり、おっさんもありの欲張り小説。され竜の紹介ではないが、極めて高度な科学知識と、極めて高度な心情描写によって、この重厚な世界観は構築されている。痺れる程の機知に富んだ言い回し。絶叫する程のストーリー展開。正直、WEB小説という概念を根本から覆す程のクオリティであると感じている。なろう最先端にして、最高峰のクリーチャー・アクション。SF好きでこれを読まないのは、人生の損失。是非、御一読を。