評価:★★★★☆ 4.4
近未来。AIの技術を研究する研究室の室長、森口裕仁。彼は『感情』を持つアンドロイドを作成する。完成した機体は二体。試作一号機に一人娘である理沙の世話をさせながら三人で生活をするうちに一号機は娘と共にさまざまな『感情』を学習していく。その日常が当たり前のものとなったとき、もう一人の研究員の元で生活していた二号機が突然暴走して壊れてしまう。一号機にも不調の陰が見える。理沙と一号機を離したとき、想像もしなかった『感情』の行方という現実を突きつけられる事になる。
話数:全10話
ジャンル:ヒューマンドラマ
時代:近未来
舞台:未登録
注意:全年齢対象
とある神が自らに似せて人を作ったように、人も自分に似せたものを作りたがる姿かたちだけならばそれは芸術なのかもしれないでも、心まで作ってしまったら?鉄の体に心を埋め込まれ、無垢で従順な彼らは与えられた感情を糧に自らの感情を育てていく愛、孤独、喜び、悲しみ――時に心のない道具にさえ絆や愛を見出す人間という生き物では、その道具に心が宿ってしまったとしたら……創造した者たちは、想像できなかった育まれる絆や絶望が、どれほど深いものなのかを生まれる愛や悲しみが、どれほど深いものなのかをそんな人間の業から生まれた愛の物語春の夜、あなたも優しい涙を流してみませんか?
アンドロイド研究員の父と幼子リサ。二人の家に「感情感知システム搭載家庭用アンドロイド試作機 AM1」がやってきた。家事、育児の回らない親子二人の生活はこの試作機の実験場にぴったりだったからだ。未だママの不在のわけを知らぬリサは、生活に入り込んでくるAM1に戸惑い、反発する。「ママの場所をとらないで!」ストレートに表現されるリサの寂しさに私の胸はキュッと痛みました。それと同じように「求められた役割を果たそう」と奮闘するAM1の内側にも『心』の声が浮かび始める。これがこの実験で見たかったもの。成果だ。AM1とリサの関係は理想的な母子関係そのものとも言える、強固なものになっていくが……。胸を掴んで離さない”心”、そして”愛”をめぐる王道ストーリー。リサの、そしてAM1の心にきっと何度も涙します。
★裕仁、お前は地獄に落ちるべきだ。読後にそう思った★ジャンルの垣根と言う言葉がある。様々なジャンルがあるが、多くはその読者対象はジャンル毎に限られる。小説という物その物がカテゴリーのくくりを免れ得ないからだ。同好の士によって愛される。それは小説に限らず創作物なら宿命だろう★だが、例外は存在する。それが本作である★森口裕仁はアンドロイドの開発研究者。その過程で〝感情〟を有したアンドロイドの開発と運用に乗り出す。そして試作機が2機建造され、裕仁ともう一人の技術者の家庭で、シッターとして片親家庭の子供の世話をすることになる。裕仁の子・理沙の元に配置された1号機AM1は困難を乗り越えながら理沙と深い絆を結ぶことに成功する。だが―――★女性作家らしい細やかな心理描写に加え、丁寧かつ適切な技術描写が光る。なにより心を持った機械と言う最大の困難なテーマを鮮やかに描いている。全ての人に読んでほしい
今よりも先、ロボットが日常生活に溶け込む未来。夢物語とされたアンドロイドの存在が現実味を帯びる中、多く取り上げられる議題がある。アンドロイドは、心を持ちうるだろうか。科学者の探究心が、『感情』を学習するアンドロイドを生み出し、一人の少女と暮らし始める。アンドロイドと少女、ぶつかり合いながらも育まれたモノは、科学者の想定を上回り、人の傲慢さを結末と共に突きつける。優しい語り口と丁寧な描写が、その結末に至る物語を鮮やかに描き出す本作。AM1が持ち得たモノは、何だったのだろうか?