評価:★★★☆☆ 2.5

 新しい時代の幕が開いてから既に十年という時間が経った。妖怪変化魑魅魍魎の住み難い時代となって、時が経ち過ぎた。
 江戸の昔から生きているような古参の者からすれば、大正の今と云うのは世知辛いものだろう。人間も、妖怪にとっても、等しい地獄かも知れぬ。
 そんな地獄の、或る夜の事だ。

 ―――暗黒の森を貫く豪雨。捨てられて幾年の山小屋。煌々と照る洋灯。遠雷。
 黒衣の僧侶、濡れ鼠の書生、傴僂(せむし)男、芸者、私。
 登場人物は全て揃っていた。完璧な状況、整った舞台、その只中に私も存在していた。
 その時私は主人公でなく、登場人物の一人であり、舞台の一つであり、夜を成す歯車の一つであった。
 十の歯車は重苦しく軋み、妖どもを集めていた。否、集め終わっていた。
 そして始まった。私が生涯忘れ得ぬ雨夜の顛末、鏑矢は彼の一声から。

 「一興、怪談会と洒落込もうかエ。」


話数:全7話
ジャンル:

登場人物
主人公属性
  • 未登録
職業・種族
  • 未登録

時代:
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録

その他要素