シュレディンガーの魚 完結日:2014年7月27日 作者:名明 伸夫 評価:★★★★☆ 3.7──あなたは"初恋"を覚えていますか?── 英明、健二、美由紀。三人の幼馴染みが織り成す、初恋をテーマに描いた作品です。 ※「あなたのSFコンテスト」参加作品 話数:全2話 ジャンル:ヒューマンドラマ 青春 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 yourSF シュレディンガー 初恋 幼馴染 魚 注意:全年齢対象 なろうで小説を読む
「あなたのSFコンテスト」へ出品されたこの作品、作者である名明さんが選んだSとFは──Schrödinger’s〈シュレディンガーの〉Fish〈魚〉。猫ならぬ魚。そしてこれは物語の根幹を成す最重要キーワードであり、同時に作品名でもあるのだ。なんという秀逸なタイトルか。私などは、これだけでもうワクワクが止まらない。片田舎の海辺で、幼馴染みたちが行う一つの賭け。クーラーボックスの中に、魚はいるのかいないのか。しかし箱の中に封じられ、重なり合った状態で存在するのは魚だけではない。そろぞれの想い、選択、そして未来が、観測され確定されるときを待っているのだ。扱う題材の巧みさ、練られた構成、選び抜かれた言葉、余韻の残るラスト。どれもが一級品の淡い恋愛模様を、ぜひお楽しみ下さい。
シュレデンガーの考え方はなかなか難しいなーと思った学生時代の思い出があります。教授の開設が眠たくなりました。 ここでは高校生の頃の恋愛から、大人になって出会ってからのお話が短編で乗っています。初恋の経験はありますが、シュレデンガーの考え方と恋愛を絡めて経験された人っていうのはそうはいないと思うので新鮮味があると思います。
心惹かれるタイトルと言うものは数多くありますが、さらにそのタイトルが全てを言い表している、そんなお話にはなかなか巡り会ったことがありません。タイトルは、最高のあらすじだと私自身は考えているのですが、このお話はまさに「シュレディンガーの魚」、この一言に尽きます。魚と言う瑞々しさを感じさせる言葉による情景描写と、青春と言う私達誰もが経験したであろう瑞々しい思い出とが、うまく融けあっていました。淡々とした語り口ですが、それが青春の切なさと輝きを引き立てるいい仕事をしています。気張らなくても読みやすい、良作だと思います。
ありきたりな青春時代の三角関係を書いた作品と思いきや、「シュレティンガーの猫」を巧みに使って、物語に緊張感を生み出している部分が凄いと思いました。 猫が魚になっている部分もセンスがあって面白いです。 ただ、箱の中に入っているのは……。 とても構成が綺麗で見習いたい作品です。自分はこんなにうまく書けないので、正直作者様に嫉妬しました。高く評価されているのも納得の出来です。
>>外へ出ると、英明の目を覚ますかのように冷ややかな潮の香りが鼻先をくすぐる。 質感豊かな表現が心地よさを誘います。 海辺の町にて、磯釣りを楽しむ二人の少年。 他愛ない会話は、幼馴染みの少女から、ふと、授業で習った「シュレディンガーの猫」の話題へ。 実に然り気無く主題へ移る手腕はお見事! 猫を魚へ置き換え、やがてとあるゲームを仕掛ける親友。 後編。成人し里帰りした彼等が振り返る、あの時の選択の結末とは── 親友・健二君がなんとも粋な計らいを魅せてくれます。 よく練られた作品です。 心地よい余韻をぜひぜひ体験してみてください。