凶界線――ボーダーライン―― 完結日:2014年12月23日 作者:赤井"CRUX"錠之介 評価:★★★★☆ 4.1四人の男たちが、凶気と狂気に魅せられていき……そして変貌していく様を描いたノワール群像劇です。 話数:全19話 ジャンル:ミステリー 青春 登場人物 主人公属性 未登録 職業・種族 未登録 時代:未登録 舞台:未登録 雰囲気:未登録 展開:未登録 その他要素 ノワール ハードボイルド 成長 群像劇 注意:R15 グロ描写あり 残酷な描写あり なろうで小説を読む
この作品の凄みは、「突きつけられる物語」であるということです。それは、各小節の題名を見ても分かると思います。「~をどう思う?」なのですから。顕著な例は主人公の一人、陽一です。最初、彼は地を這う虫のような存在でしかありません。だが、心の深いところには、マグマのように怒りを貯め込んでいて、世の中の理不尽に牙があれば牙を剥きたいと考えています。作者は、この陽一という人物を読む人が自己を投影しやすいように等身大に描き、理不尽を我々に追体験させながら「君たちもそう思っているだろう?」という、心の奥にある醜いものを、突きつけてきます。その結果、陽一という『地を這う虫』がどうなるのか、ページをめくる手がもどかしく感じるほど、ひきこまれてしまうのです。様々なことを「どう思う?」と突きつけられながら読むのは、怖いと同時にとても刺激になります。ハードボイルドファンは、必読です。
私達が生きる、当たり前で平和な日常。しかしその隣りには人間のあらゆる悪意、暴力、欲望、狂気の渦巻く裏社会が存在します。表社会と裏社会という、一見相反する世界に生きる人間を分けるモノとは、目に見えない唯一本の凶界線なのかも知れない……これは、その凶界線を跨いで交錯し、絡み合う四人の男達の群像劇です。映像として目に浮かぶリアルで鮮やかなアクション。善人・悪人などと言った画一的な枠に囚われることのない人物造形。己の胸の内を覗かれたのかと、ひやりとする程に細やかな心理描写。淡々と丁寧な筆致で綴られ、しかし情け容赦無く描かれる現実社会の闇。じりじりと灼けつくような焦燥感を煽るストーリー展開。巷に溢れる異世界ファンタジーには飽き飽きした、などと仰る貴方。生温い異世界モノとは一線を画した暗く歪んだリアリズムの世界に、足を踏み入れる勇気はありますか?
この作品はなろうで主流な「ファンタジー」「チート」「異世界」などと真っ向から「なろうの王道過ぎるもの」を否定した作品となっています。ファンタジー、自分は嫌いでもありません。ですがこのサイト「なろう」はファンタジーばかりが目立ってしまう傾向があります。その為どんなに素晴らしい他ジャンルの作品があろうとも埋もれてしまうのです。そこで作者様は「いつも何も無いかのように過ごしている現実」に目を向け書いた作品がこの作品といっても過言ではないでしょう。「非現実」とは「現実」にはない要素が多く詰まった事を言いますがこの作品は「非現実」に対抗できる作品です。しっかりと「現実とはなんなのか」を書き上げています。オススメです。
皆さんが生活しているところを現実としましょう。では、非現実とは何か。それは、わたし達が目を反らすもの。暴力だったり裏社会などだ。一見して自分には関係ないことのように思える。しかし、その境目はどこにあるのか。そう、現実と非現実の境目は見えないのだ。この作品は、現実と非現実が入り交じっている。そして、境目が見えるようで見えない。現実、非現実の主人公四人が絡み合っていく。引き寄せられるように、周りを巻き込んでいく。先の見えない凶界線はどこにあるのだろうか。
思わずドキッとしてしまう台詞。第二話『あんた、この被害者をどう思う?』その作中内で登場人物が語る言葉なんですが。その後につづく彼の心情吐露にも眼を見張ってしまいます。私も少し共感してしまう所がありました。なかなかこう自分の弱い部分や嫉妬してまうようなマイナスの心情を描ける作者さんは少ないんじゃないでしょうか。誰だって好かれたいですから。プラスな感情だけを書きたいものです。それでも弱い部分や自分の醜い心もきちんと書けるのが小説家としての勇気だと思います。文章、心理描写も思わず尊敬してしまう程、洗練されています。お勧めの作品です(*^^)v
この作品、チートやヒロインは出ません。しかしあなたのすぐ隣に存在する、暴力世界という異世界が見事に表現されている作品だと思います。コメディー要素も今のところありませんが、文章力、物語の構成力が共に高いため、堅苦しさもなく読みやすいです。そう、この作品は気が付けば読み進めてしまう意味で、物語への吸引力が、◯トⅡの◯クリューパイルドライバー並みに強いんです。四人の主人公による群像劇で、毎話四つの視点から物語を追っていきます。主人公同士のすれ違いや、一人の主人公が行った事により、それが他の主人公の物語に間接的に影響を及ぼしたりと、練られたストーリー構成のため、非常に非常に続きが気になっております。
日常と非日常の境目はほんの紙一重で、ひょっとしたらあなたのすぐ傍にあるのかも知れない。この話には四人の男を中心に進みます。裏社会で生き抜く男。復讐の為に堕ちていく男。自分を持たない男。非日常に憧れる男。彼らは一見すると、別々の人生を生きている。だが、少しずつ互いの人生のレールにある者は知らず知らず近づき、ある者は自ら歩み寄ろうとする。まだ、物語は終わっていないからこう言い切るのは時期尚早だと思う。でも、こう言おう。非日常と日常の境界線はあなたのすぐ傍にあるのだ、と。この話は決して他人事じゃないかも知れないのだ。ほら、今あなたの横にも【凶界線】はあるかも知れません。
作者の赤井氏は総合格闘技家をされているそうだ。その独特な体験と視点を持って生み出す作品は、いわゆる”なろう”的なチートやご都合主義とは無縁である。ごつごつと硬く、野太く、暴力的。しかしそれらは一本筋の通った美学と信念によって読者を唸らせる。そんな氏の作品にあっても、この作品は更に異色だ。舞台は勇者もチートも魔法も無い、現代日本の日常と物理的には何の隔たりも無い、心一つで超えてしまう”凶界線”の向こう側だ。その入り口で濃密な凶暴性と血生臭さの持つ怪しげな魅力に虜となる者もあれば、最初から向こう側に棲む住人達もある。―そして、彼らは時に交差する。万華鏡の様に複雑な人間模様が織り成す物語の向こう側には、果たして何が待ち構えているのか。”凶界線”の向こう側にある、異世界。異形の現実(リアル)から目を逸らす事は……許されない。