評価:★★★★☆ 3.5
採取後3分で死滅し、培養は不可能、挙句の果てには効果すら不明。謎のナノマシン、"Sheep Tumor"。
医療用ナノマシンの第一人者、グレナ・ストロムブラードが新たなナノマシンを残して姿を消した。
時代を変えた天才の未知の作品は金と争いの匂いへと変わり、強くひきつけられた好事家達は硝煙を撒き散らしながら群る。
ナノマシン培養プラントとされてしまった可憐な少女に。巨万の富と引き換える人質として、唯一のナノマシンプラントとして、そして世界最強の執事の主として。
実の父によって争いの渦中で叩き落された年端も行かぬ少女――ソフィア・ストロムブラードは何も選ぶ事が出来なかったからこそ、ただ願う。何もかも、全て燃えてしまえ、と。
始まる茶番は誰のため?
話数:全77話
ジャンル:SF
時代:近未来
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
例えば、眠りについた姫を起こすために。 例えば、変貌した王子を人の姿に戻すために。 おとぎ話に出てくるキスシーンは、ただ愛の証明というだけではない。 人智の及ばない奇跡を起こす、キーアクションてしての側面を持つ。 ジャンルがSFであるように、この物語は、ファンタジーとはかけ離れている。 そういう意味では、無粋なのだろう。 体にナノマシンを持つ少女がたった三分間、男を戦士へと変えるために必要なプロセスでしかない。 そうして行われるのは、二人が生きるための戦い。 おとぎ話のお姫様と王子様とはかけ離れた、血色の惨劇と暴力。 けれどもどこか、ファンタジックなロマンスを感じる。
最初に言おう。この作品の口付けは「復讐」で始まり、「愛情」で終わる。復讐で始まるキスの味は甘美であり、同時に斬新なSFギミックとなっている。少女ソフィアからの口付けによって、執事クロードは「殺戮の代行者」となり、同時にソフィアを守る最強の「鬼札」となるのだ。その上でソフィアの葛藤や彼女を取り巻く魅力溢れる女性達、クロードの異常な強さを描写している。最後に言おう。この作品は、J.Doe氏の真骨頂とも呼べるだろう、今後の活躍に期待したいと思う。