ゼルジーとリシアン

物語は、ソームウッド・タウンに住むリシアンのもとに、いとこのゼルジーとパルナンがやって来るところから始まります。空想好きのゼルジーとリシアンが紡ぎ出す世界は、最初はほんのりとした夢物語のように思えます。それがやがて、さまざまな色を帯び始め、背景や登場人物の手ざわりが感じられるようになり、驚きに満ちた冒険の世界へと変わっていきます。わくわくする魔法の力、恐ろしげな魔王、影の国、そんな空想の世界と同時に、現実の世界での生活や情景描写も活き活きと描かれています。遠い昔に過ぎ去った夏休みのような、それでいてすぐそばに感じられるような、温かく懐かしい物語です。最後まで読んだ時、ゼルジーとリシアン、仲間たちの強い絆に感動し、自分も彼らと一緒に冒険していたような、そしてこれからさらなる冒険へ繰り出すような、明るい気持ちになること間違いなしです。

リシアンはちょっぴりファンタジックな空想。ゼルジーはちょっぴり冒険的な空想。同じようだけどちょっぴり違うのこの二人。魔法の世界と勇気の世界、二つ揃えばどこへだって行けるわ。そんな二人のどこか懐かしい、誰もが考えた事のあるような夢の世界へあなたも入ってみてはいかがですか？夢野彼方さんが描くとても楽しい世界入ってみましょう。私達と一緒に……

それは、とある夏休み。末っ子の少女リシアンが、サマーキャンプに行ってしまった兄弟のため、ひとりぼっちの夏休みを過ごさなくても済むようにと、お母さんがいとこの兄妹パルナンとゼルジーを呼ぶところから、物語は始まります。田舎育ちのリシアンと、都会育ちのゼルジー。共通点は、二人とも空想が大好きなところでした。優しい、ひとつひとつの言葉を丁寧に推敲された文体から、海外の良作を読んでいるような雰囲気が漂います。二人の少女の空想力から、どんな世界が飛び出すのか、それは読んでからのお楽しみです。作者様の他作品「こんな夢を観た」シリーズも、どれを取っても面白いので、この「ゼルジーとリシアン」もこの先が楽しみです。