評価:★★★★☆ 4.2
橋本ちかげ短期集中連載!万年一人ぼっち、文芸サークル所属の大学生那智豊(なちゆたか)に舞い降りた奇跡!?まさかのクリスマスデートに誘ってくれた後輩の女の子。九王沢(くのうさわ)さんは英国大博士課程卒、ワールドクラスの知性と絶滅種級のお嬢様というトンデモ設定つき!でも黒髪清楚の美貌にHカップの巨乳まで揃った彼女が、どうして?
「だってわたし、今日はあなたにいっぱい突っ込んでもらいたいんです!」
ああ、これからボケるからね…ってそっちかい!なんだこのデート!?
と、激しく心の中で突っ込む那智くんは九王沢さんをお泊りまで導けるのか?九王沢さんを帰さない最後の一言とは?
『軍チカン兵衛』に続く割烹生まれの告白シチュエーションです。
2018年10月8日よりエブリスタさまにも、掲載させて頂いております。
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
開幕から機関銃の様にテンション高めの語りが入る本作。ともすればそれは情報過多から読者の脳のキャパを超過してしまう事もあるため導入としては難度が高い部類に入るものです。しかし本作のそれは全くそう言った感覚を読み手に与えずトップスピードで走り出す事をやってのけています。ヒロイン九王沢さんの行動・言動とツッコミ役の主人公の一人称のバランスが絶妙で、読み手は気付けば物語の内側に引っ張りこまれていると言うもの。どちらかの比重が重すぎても成立しなかったであろう一点を正確に射抜くセンスが光っていると感じました。
この作品の重厚に、怯む寸暇が惜しくなったので、遂に筆を執ることにした。何より私の心に刻まれたのは、本作で、もう一人のヒロインとも呼ぶべき少女が叫ぶ、「違う」という悲鳴にも似た叫びである。いや、真実、悲鳴だったのだろうと思う。喪われつつある自我、心の軋む音だったのだろう。私はそれを想うと、今でも痛ましくて顔を歪めてしまう。若い男女が、一人の少女の魂の行く末について延々、語り合うことで次第に二人の距離は縮まる。個の守りを破り、踏み出す勇気が触れ合いを生む可能性も示唆する物語だ。あなたは、どのようにあればあなたであると明言できるだろう。一人の少女の魂の苛烈な軌跡と、作者の問いが、私自身にも向けられていると感じる。この世界を旅して、また戻って来て欲しい。