この世は〝精霊〟で溢れている。
ただ、人類がそれを認識できないだけで――。人々に害をもたらす精霊、〝禍津神〟の討伐を請け負う〝祓い屋〟。
その末席に身を置く、ナルシストかつエゴイストな美少女「月宮一葉」は、大精霊〝古狼〟とその魂の半分までもを共有する〝憑物〟であった。養父の死を切っ掛けに、ワケアリな者達の集う〝白藤学園〟に通うことになった月宮一葉は、そこで三本腕の禍津神〝ハンズマン〟により引き起こされる事件に巻き込まれる。
ワケアリのお嬢様「十夜雪咲」に事件の調査を、その幼馴染である「五坂敬祐」から解決を依頼された一葉。
紆余曲折の末その事件を解決に導くが、しかし禍津神〝ハンズマン〟を召喚し、この事件を引き起こした首謀者は謎のままであった。禍津神による事件、事故の捜査、解決を担当する警察機関「特殊災害対策室」、通称〝特災〟に事件の全容解明を任せ、平和な学園生活に戻ろうとしていた一葉であったが、すぐさま第二の事件が起きる。
四肢を切り取り持ち去る〝ハンズマン〟事件に続いて起きた第二の事件の下手人である禍津神は、内臓の全てを食い荒すというその手法から〝腑喰らい〟と呼ばれた。
一葉は再び十夜雪咲から事件の調査、そして解決の依頼を受ける。そして追い詰めた腑喰らいの正体は、何かしらの禍津神に操られた十夜雪咲の幼馴染、五坂敬祐であった。
苦悩の末、操られた五坂を倒した一葉。そして死の淵に向かうその口からある事実を告げられる。
第一、第二の事件による被害者は、全てある禍津神を呼び起こすための〝供物〟であるという事。
そしてその召喚される禍津神とは、伝説にも語られる大禍津神〝土蜘蛛〟であるという。五坂敬祐の最後の願いを託された一葉は、その強大な敵に立ち向かうのであった。
ツキモノ少女は拝金主義
完結日:2015年4月16日
作者:白笹 那智
評価:★★★★☆ 4.3
話数:全30話
ジャンル:その他
時代:未登録
舞台:学園
雰囲気:未登録
展開:未登録
人と妖とのたたかい。 そう聞いたあなたはおそらく、札や印を駆使する人間とおぞましい妖とが繰り広げるバトルを思い浮かべていることと思います。 確かにこの作品は、術者と異形とのバトルを魅力のひとつとしています。 しかし、それだけではありません。 主人公は異形をその身に宿す少女。彼女は人外の力と人間との境界で苦悶し、力へ傾くか人に留まるかの“たたかい”を心中で繰り広げるのです。 そんな彼女が人間らしくあるために必要と考えたのは、お金への執着。 お金を稼ぐことこそ、人の野生である。 人ならざる力にとりこまれないため、人であり続けるため、彼女はお金を崇めるようになりました。 けっきょく、人であるためになにが大切なのか。 それは物語の終盤まで読み進めた方だけ知ることができます。 表現や描写も巧みです。それぞれの場面が流れるように鮮明に想像できます。 是非ご一読を。
丁寧な描写、迫力の戦闘シーン、強くて美しい主人公。タイトル通り、拝金主義な主人公がどうなって行くのか、是非じっくりと読んで頂きたい作品です。主人公の一人称で進む文章は読みやすく、他のキャラクター達も全員曲者なので、セリフの1つ1つを楽しんで読めると思います。残酷なシーンもありますが、それさえもどこか美しさを感じてしまいます。