評価:★★★★☆ 4.1
ジャンル別ランキング『しるこホラー』で堂々一位!!
『僕』の暮らすしるこ町では奇妙なことばかりが起こる。真夏にコタツでしるこを食べる男達、給水所にしるこしかないマラソン大会、煮えたしるこのプールで行なわれる寒中水泳、熱いしるこを掛け合う命懸けの競技などなどなど……そんなある日、住人がしるこになる現象が発生。『僕』は、夢でそれがしるこの神の仕業と知る。やがて、しるこ伝説に導かれ、壮絶な戦いの幕が開く。
──ここはあなたを殺す町。ここはあなたの、しるこ地獄!──
話数:全93話
ジャンル:ホラー
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
――ここはあなたを殺す町。ここはあなたの、しるこ地獄!―― あらすじに打ち込まれた印象深い一文を見て、読み始める。 しるこホラー等と嘯き始まるのは、甘い小豆の煮汁を題材とした、不条理でシュールな何か。 ナンセンスな小噺を続けるそういう類の物語かと、飽きるまで読むことにする。 すると飽きない。 臙脂色の世界が終わらない。 くだらないと鼻で笑った一つ一つが恐怖装置であったことに気付き、しるこホラーは始まっていたことを知る。 しるこで栄えたしるこ町。 しるこの神様の伝説。 人々がしるこになってしまう怪現象。 そしてそこにいた、しるこの神。 祭の名は神殺し。 読み進む程、歪になっていく真相。 途中で飽きて止めるもよし、結末まで読み切るもよし。 グランドフィナーレで読了済の僕達が待つ。 神殺しの物語とは、人の業を神におっ被せる物語。 そうして許しを乞うのだ。 誰に?
私は今、生まれて初めてレビューを書こうとしている。時は蝉がけたたましく鳴く盛夏の朝。まだ寝惚けた頭で、それでもこのレビューを書かなくてはならない、と私を急き立てるのは、この『しるこ地獄』の魔力ゆえとしか考えられない。 本作は一見、しるこに満ちたとりとめのないカオスな短編の連なりである。 だが読者は読み進める内にその予想を見事に裏切られる。 巧妙に仕組まれていた伏線は、ラストに至る間に全て鮮やかに回収されてしまった。その周到さに目を見張る。 コメディーとシュールのないまぜの内に、確かな心理描写も織り込まれていて抜け目がない。 まさか私が人生で初めて書くレビューの作品名が『しるこ地獄』であろうとは、私自身を含め誰に予測出来ただろう? 人生とはわからない。蝉が私の心情に同意するように雄叫びを続けている。 「傑作だ」