評価:★★★★☆ 4.4
バスティア王国は、もはや国土の半分が「鎖蝕(さしょく)」に覆われつつあった。
「鎖蝕」――貪欲に何もかも呑みこむ白い砂。
王国政府にはそれを止める有効な手立てはなく、バスティアは亡国の危機に瀕していた。反乱軍に所属するアルク、シエラやリオは、政府側と対立するゲリラだ。白い砂に住む場所を奪われた人々を収容所に送ろうとする王軍を急襲し、物資を奪う。やがては「鎖蝕」を分解する酵素を開発し、鎖蝕を元の姿に戻そうとしている。
だが、王国政府が解決策として選んだのは、かつて「鎖蝕」をもたらした「電離物性変化」を再び使って、強引に国土を緑化しようと試みる「740計画」だった。
「電離物性変化」の危険を考えて、計画を止めようとする反乱軍の面々。
彼らは、計画の要である超高高度軌道周回衛星・ユティエスを撃墜しようとする。そして、そのユティエスには、シエラの双子の妹であり、アルクにとってどうしても取り返したい大事な少女――行方不明のラミアが搭乗していた。
話数:全28話
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
「人間の企てが却って人間を襲う」という物語の永遠のテーマを基調としながら、過去と未来と、人と人とが錯綜するドラマこそがこの作品の醍醐味といえるでしょう。「鎖蝕」という国全体にはびこる脅威と、主人公とヒロインとを結びつける一つの絆――。物語の終盤で、主人公は大きな決断に迫られます。 印象深いのはエピローグで紹介されているドラマです。物語全般について作者なりに思ったことが反映されているのかもしれません。作中の人物はそのドラマにについて「ご都合主義」と批判しています。しかしそうであったにしても、あえて「傑作」と叫び喝采する態度よりはずっといいのではないでしょうか。ユティエスの見下ろしている作中の世界が、人の都合により滅びかけ、しかし人の絆によって救われるべき世界であるとするならば。そしてそのドラマが、物語全体を映し出す鏡であるとするならば。
「電離物性変化」このフレーズだけでSF好きな私は、最後まで読もうと決心しました。まぁ作者様はファンタジージャンルと認識されてるようですが……と前置きは止めて。鎖蝕と呼ばれる現象により、どんどんと生息圏を奪われていく国。それでも対立する人と人。重厚な設定に、シリアスなストーリー。しっかりと書き込まれているので、荒廃していく風景や、それに翻弄される人類の心情が伝わってきます。まだ連載初期ですが、一人でも多くの人に読んで貰いたいのでレビュー書かせていただきました。タグに戦記とあるのでこれから戦闘も多そうですが、作者様の筆力なら臨場感溢れるはず。ほんとうに先待ち遠しい。