評価:★★★★☆ 4.3
――道がなくなってしまった。これまで歩いてきた道も、これから歩むはずだった道も。
戦ですべてを失いかつての敵の下で働くニラは、ある日落し物を拾う。拾った場所もさることながら、落とし主はニラの故郷を滅ぼした、まさにその人で……
家族や故郷への愛情、優しくて苦い記憶、捕虜としての立場の狭間で揺れるニラ。悩み苦しみながら「前を向くこと」の意味を問い続けた先にあるものとは――
※内容はシリアスですが、恋愛面のドロドロ展開にはなりません。
※主人公の仕事内容の関係で、お食事しながら読むのはあまりオススメしません。
話数:全38話
ジャンル:異世界恋愛
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:中世
舞台:未登録
注意:残酷な描写あり
いつもは見ないレビュー。見かけたTOPがこのお話でした。読み始めて一気に読み終わり、思ったのはレビューのおかげだなと。この話に関して書くことがレビューなのはわかっているけれど。人それぞれ好みがあって、自分がいいもの、おすすめしたいものが他の人には好みではない、いいものであるとは限らない。私にはこのお話は、ずかーんとストライクでした。レビューを誰かが書かなければたどり着けない。レビューを書いてくださった方、ありがとうございます。いろいろと自分と向き合うことを考える、いい作品に出会えました。
最初に断っておくが、私とは真逆の価値観を持つ作者様である。だから、非常に面白く拝読させていただいた。そうなのか、そう言うものの考え方もあるのかと。中でも興味深かったのは、人の誇りに関して、である。私は、戦いに敗れたのなら、たとえ泥をすすっても、やり返さねばならぬ、と言う主義。それが、誇りを守ることにつながると私は思う。方や、この作者様は、相手の行為を受け入れ、だか心は毅然と前を向き、決して服従しない。と言う主義。これも、誇り高き生き方であることに違いは無い。この物語の主人公、ニラはおそらく、作者様の考えにいちばん近い人物であろうと推測できる。と、これ以上書くとネタバレになってしまうので……とりあえず、一度お読みになってほしい。そして、誇りについて考えて欲しい。そう思います。
なろうで小説を読んでいると、ポイント評価が五段階しか無いことがもどかしく思えることが、たまにある。だが、100ポイントという評価は無いのか?と思ったのは、この小説が初めてだ。国同士の戦争に振り回される人々の話である。架空の。だが、本当に架空の話と片付けてしまって良いのか、と思わせる力が、この小説にはある。今、当たり前に享受出来ている「平和な日常」が、あっさりと壊されていく世界。その「日常を奪われること」こそが、何より残酷なのだということを、この小説は強く訴えてくる。幸いなことに、作者さんはハッピーエンドがお好きと言うことで、主人公たちは幸せな雰囲気の中で物語は終わる。本当の残酷さを知る人は、架空の世界にだけでも、ハッピーエンドを望むのかもしれない。なろうでは異質とさえ思える深い部分を抉ってくる作品。道の先に何が続くのか、ぜひ読んで欲しい。
戦勝国で「汚れ仕事」に従事する主人公、相反する「正義」がぶつかる世界。この作品は、「書きにくさ」ゆえに避けられがちな要素をあえて中心に据えています。足かけ三年をかけて書ききられた一話一話からは、作者さんがいかに真摯に書くことに向き合ったかが窺えます。そして「向き合う」ということは、この作品の根底に流れる大きなテーマにもなっています。作中、敗戦国の民が捕虜として生きながらえることを、あれもまた闘いであると言うシーンがあります。私たちの日常もまた、「競争」という名の闘いがいっぱいです。勉強、仕事、夢。そんな現代を生きることもまたつらい闘いなのだと言ってもらえたような気持ちになり、件の台詞には涙が出そうになりました。作品を出版したい方には是非とも読んで欲しい一作です。重たくとも書くべきだと思った何かに、最後まで向き合うことの大切さと醍醐味が、きっとわかると思います。
異世界では無い筈の、中世〜戦乱の時代のごく短くて狭い世界の、とっても小さな物語。戦い、争い、統治の幕間とも言える物語。「落し物」を届けただけ…から始まる物語その口から紡がれる言葉は?その瞳の奥にある感情は?正しいと思う行動は、正義は、最後にどんな結末を迎えるのですか??完結済みの、この作品レビューを書くに当たり、実は私も結末を知りません。途中で書いています。最後はどうなるかまったくわかりません…でも、皆さんに読んで欲しいのです。世界を救う勇者も、魔法も無いけど、やもすれば悪人も出てこないかもしれない、この物語は読み始めると、たとえ一瞬たりとも目を離せないのを知って欲しい。ただそれだけを伝えたいのです。