節合わせの幸せ

　彼女は眠る。冷たい機械に囚われて、深く長く眠り続けていたのだ。目覚めたのは滅びゆく地球で、出会ったのは奇妙なサイボーグ。　どれほどの時間を、どれほどの想いをこの短い中に詰め込めばいいのだろう。　想像を絶する想いの熱量は、あまりにも美しかった。世界観、想い、そして情景全てが引きずり込まれるような引力のある描写で完成されている。予測可能回避不可能という言葉が頭によぎる。予想された結末へ向けて、少女が歩んでいく。読者はそれをひたすら染み入るように読むしかない。　正面から叩きつけられるような感動を届けてくれるだろう。これは愛おしく、切ない物語だ。

　五万年後の地球、文明が滅び、人間のいなくなったその星で少女は目を醒ます。そこにあるのは星から逃げ出すための脱出ポットとある一人のサイボーグの不器用な背中だけ。それから三日、彼女はある決断をくだすことになる……　この物語は変わらぬ愛と一つの約束について語るものだ。終末を迎えた世界でも変わらぬものがあるのだと、途方も無い年月を経ても確かに行き続ける思いがあるのだと、この物語は叫んでいる。　それはきっと器用なものではない。華やかなものでもない。だが、不器用だからこそ、強く輝くものがある。この物語の根幹にあるのはある男の不器用で力強い、美しい愛なのだ。　もし、不器用な愛を、誰よりも強く純粋な愛を求めるなら是非この作品を一読あれ。貴方の求めるものはここにある。