評価:★★★★☆ 4.1
幼少から様々な武道を修練してきた遠野一二三(とおのひふみ)は、ある朝、稽古中異世界へ強制的に旅立つことになった。
現代日本で人を殺したいという欲求を溜め込んでいた一二三は、魔物が跋扈し、人間同士の争いもある世界だと聞いて、異世界で生きていく事を決めた。
人間の限界まで鍛えた武技と、苦もなく人を殺せる歪んだ倫理観を持った、恐ろしい男が異世界へと呼び出された……。☆続編『よみがえる殺戮者http://ncode.syosetu.com/n4805cx/』を開始いたしました。こちらもよろしくお願いします!
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話数:全184話
ジャンル:
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
多くの方がこの小説を読んで特殊な主人公の話だと思うでしょう。しかし、私は逆でこの主人公はある意味で、チート能力を持った人間の心理や行動として「逆にリアル」なのではないかと思います。異世界転生は所謂テンプレの宝庫ですが、本当にそれって人間の心理として妥当なのかなと考えさせられます。都市を区画ごと粉砕できる力をもった人間が、態々面倒くさい貴族の勢力争いに巻き込まれてあげるでしょうか?王の寝室まで誰にも見つからず侵入できるスキルを持った人間がコツコツギルドランクをあげるでしょうか?そういったものに対して今まで何らかの疑問を持っていた人なら、きっとこの作品はピッタリとくるはずです。
人にはそれぞれ欲望がありますが、欲望のままに生きることは出来ません。しかもその欲望が「人を殺したい」なんて社会から拒否されるものであればなおのこと。しかしもしもそんな欲望を持っていて、しかもそれを許容する環境(世界)があり、なおかつ実現できる力があったなら…きっと人間はこの主人公のようになるのでしょう。はっきり言ってわがままな主人公です。自分は他人を利用しまくるくせに自分が利用されるのは嫌い。自分が殺されてもいいからと他人にも殺されていい覚悟をしろと強要する。自分の論理に基づき、いかにも正論のようにわがままを言うこの主人公はある意味中二病なんでしょう。破綻した論理に抵抗がある方にはオススメしませんが、とりあえず人が死ぬ描写が好きな方には特にオススメ致します。ただ、「戦闘描写」が好きな方にはストレスを感じてしまう描写もあるかもしれません。あくまで人が死ぬ描写好きな方向けです。
これはある種のテーマが突出した凄い作品ですなぁ。『殺戮』と『狂人』というテーマと世界観が読み手を上手く引き込むエッセンスとなっています。チートものなのですが、なろう系にありがちな『あまーい展開』や『いきなりハーレム』などよりも、もっと暴力的や本能的な戦闘狂をしっかりと描くと言う部分は独自性をもった素晴らしい作品ですね。1月の夜長にこちらの殺戮と血にまみれた異世界ファンタジーを読まれてみてはいかがでしょうか。
狂人を、特にテロリストを描くのがウマイのかもしれない。とりあえず、モラルとかどうでもいいんだよ。ドカバキグシャを見たいんだよ。とか、俺ルールサイコーが見たいんだよ。って人にオススメ。本当に、独自の価値観を持ったキャラが多い。ただ、丁寧に読めば、幾つかの系統の考え方のぶつかり合いなんだな。と、感じるかも。多様性とは何か?同化とはなにか?辺りを考えさせてくれる作品かもしれない。もちろん、考えなくても楽しいし、そっちの方が楽しめると思う
舞台を用意され、そこで人物が状況に対応する。多くの物語はそのような構成をしているが、この作品は遠野一二三と言う男を中心に舞台世界が回っている、と言う状況すら通り越して、遠野一二三という男の行動原理や哲学が、舞台世界を丸ごとひっくり返す、作り変える構成になっている。モチーフは殺人であり、彼の行く道には死体が積み重なる。しかし遠野一二三と言う男の持つ動機や哲学の純粋さ、ごまかしや妥協の一切ないゆるぎなさに我々は美しさを感じずにはいられない。「抜身の刀がそのまま歩いている」と作品内で評されたのはまさに至言である。「抜身の刀みたいな男を描きたい」きっとそんなコンセプトでこの作品は作られていると感じる。そんなキャラクター小説としての立ち位置、芯のブレなさ、それを裏付ける圧倒的な筆力に、読者としてただ息を飲むばかりであり、書き手として嫉妬せずにはいられない。
様々な武術を修め、殺人も厭わずそれを振う機会を望む男は異世界に招かれる。転移早々王家に叛逆、逃亡からの奴隷ヒロイン獲得などのテンプレイベントをこなしながらその圧倒的な武力を以って行く先々で血の雨を降らす。しかし、殺戮を続ける彼は思うのだ。「こんなものでは、満足できない」と―戦争とは文明の破壊行為にして文明の発展過程でもある。知識やら技術アドバンテージで文化を発展させた結果、争いに発展し、戦いを経て更に技術が発展していくのが普通の異世界モノ。しかし、この作品では戦闘技術から治世手法まで発展に必要な知識を伝授する一方で、あちこちにちょっかいをかける……世界中を血みどろの争いへ導くために。目的と過程が見事に逆転しているのである。突き抜けた個性で敵味方―周り全てを振り回し、敬意も敵意も愛も怨も全てその身に受ける。気ままな無双系主人公はそうでなくてはならないし、それくらいが丁度いいのだ。
人を殺す技術を持ちながら、鍛えながらも平穏な現代日本では活かす事が出来なかった一二三。異世界転移し彼は自由に気ままに殺人に勤しむ。しかし敵のチョロさにガッカリし、面白い世界じゃないのなら自身で面白くしよう、と己が変わるのではなく世界を変えようと真面目に考える。彼は快楽殺人鬼ではないと言う。どの世界でも、例え異世界でも人を殺す事を好む人間は快楽殺人鬼と分類されるだろうというツッコミをしてはいけない。彼を罵倒してもいけない。彼に殺されずとも狂信な女性に頭をかち割られる。超可愛い。人がゴミのように死ぬ異世界冒険譚。