評価:★★★★☆ 3.6
安楽死をもたらす蝶たちがサナトリウムを包囲する――。◆1995年、夏。村木栄(むらきさかえ)は高校卒業後、山形県にあるサナトリウムに赴任した。療養を続ける村木円理(むらきえんり)の世話人になるために。◆東京と山形がまだまだ遠かった時代。いとこ同士の二人は文通することで想いを通わせていた。これから円理と穏やかな時間を過ごせると思った矢先、サナトリウムで惨劇の幕が開く。◆事件の背後でうごめく『青の学派』という宗教団体。『月を孕む女』という絵の秘密。謎と狂気に立ち向かう栄と円理がたどり着いた真実は――。
話数:全26話
ジャンル:
登場人物
主人公属性
- 未登録
職業・種族
- 未登録
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:未登録
注意:全年齢対象
石花症という不治の病を患う少女・円理が、いとこで想い人の栄に手紙を送るところから物語は始まる。円理が収容されているサナトリウム、外界から隔絶されたこの洋館で起こる怪事件を描く本作だが、ヒロインである円理の魅力が際立っている。理知的で大人びた口調とはアンバランスなまでの、主人公への真っ直ぐな愛情表現。主人公・栄はこの館に来ることで、円理の魅力を再発見していくことになる。勿論、2人とも年齢相応の未熟さをもっていて、円理は時としてひどく頑固だし、栄にも独りよがりなところや臆病さがある。そんな2人が愛し合い成長していく様子を、事件の中で丁寧に描いている作者の筆力に感銘を受けた。美しい文章も相まって、何度も読み返したくなる物語だ。