評価:★★★★☆ 4
剣と魔法が支配したりする世界『シャルムシャリーストーク』。
ここは人間世界と魔族世界の二つに分かれ、互いの種族が終わらない戦争を繰り広げる世界である。
魔族世界の盟主であり、最高権力者である魔王。
この度、新たに偶然にもその座についた彼は、どうしようもなく変人であった……愛する人形の少女アリスや、敵でありながらも最大の理解者である人間の勇者エリーシャ、黒竜の姫君や吸血族の姫君と出会い、変人は、やがて世界を大きく動かしてゆく。
話数:全474話
ジャンル:エピック・ファンタジー 異世界ファンタジー
雰囲気:未登録
展開:未登録
人類と魔族が争いあう、とある世界。様々な偶然が重なり、新たに魔王になった男は中年紳士的かつサブカル気質の変人だった。同じ趣味の女勇者と奇妙な交流が芽生えたり、ハーレムが作られても父親のように愛でるだけ。そんなヘンテコ魔王と彼の過去・現在・未来に関わる者達が織り為す奇妙で滑稽でビターな群像劇。本作は変わり者の魔王を軸にした魔族と人類と世界のメタ構造を描いている。某駄肉を例に挙げるまでもなくこの手の作品は多いが、その中でも本作は特に高水準で纏まっている。様々な勢力が入り乱れる戦記モノであり、人間賛歌を謡う哲学譚であり、一見どうでもよさそうな人物や設定が予想外の角度から重要さを垣間見せるミステリーでもある。本作でとりわけ印象強く描かれるのが「そういう生き方しかできない」不器用な人々のドラマ。それに従い果てる様も、それに抗い苦しむ姿も知性あるモノが故の業と美しさを浮き彫りにする。
戦記物をある程度読み進めると、必ず登場する立ち位置のキャラクターがいます。世界の情勢に全く興味を示さず、ひたすら自らの趣味に没頭し、だというのにその情勢を左右するほどの力を持つタイプの人物。この物語はそんな魔王が主人公の物語です。なので、周りのキャラクターが主人公の扱いにやきもきする様が面白さのポイントかと思います。付け加えるなら、ドールに対する主人公の扱いがとても素敵です。何だか父と娘みたいな関係でドキドキします。
この作品を、一言で表すなら、表題になると思います。これ以上を書くと、ネタバレになりそうです。人間と魔族の対立構造があり、勇者と魔王がいて、と、定番ですが、作者様の絶妙なスパイスにより、これらが独特の世界観へと昇華されています。人間の世界、代々の勇者に歴史あり、また、魔族の世界、代々の魔王にも歴史あり、と、時間軸によって変化していく世界が描かれ、そして、とある謎が、常に伏線として張られており、物語を魅力的に仕上げています。さらにお勧めできるポイントとして、定期的な更新があります。現在に至るまで、週に1回、必ず更新されています。内容はいいのに、続きが読みたいのに、1年、2年待ってもなかなか・・・・な小説がある中、読者としては、とても嬉しい要素です。こうした優良小説でありながら、ランキングの低さは不当と思ってます。是非、もっと多くの方の目に届くことを願い、今回レビューさせていただきました。