評価:★★★★☆ 3.9
大学一年生の志麻咲信吾はある日突然、中学生時代に投稿して未完のままだったWeb小説の世界へと召喚されてしまう。
何故かオンラインのままのパソコンと、原作知識だけを頼りに、信吾は“主人公”達を導いていく。
やがて信吾は、自身も知らない後付け設定だらけの世界を冒険していくうちに、秘められた力と己の役目に気付く。「俺は……もう二度と、エタらない!」
創作活動に携わる全ての人にエールを送る(?)ちょっぴり黒歴史発掘冒険記、開幕!
話数:全146話
時代:未登録
舞台:未登録
雰囲気:未登録
展開:成り上がり
主人公はある日異世界へ召喚され、剣と魔法のファンタジー世界で冒険の日々を送ることとなる。……ここまでなら、なろうでありふれたファンタジーものだ。 この作品の最も大きな特色であり、ある意味恐ろしい要素は、転移した先が自作小説(しかもエタった作品)という点に尽きる。 ネット小説に携わってきた人々の多くが共感しうる苦悩に震え、それでもなお、かつて自分が見放してきたキャラ達と共に「本当の結末」を目指して邁進する姿は、勇ましくもどこか切ない哀愁を感じさせてくれます。 書くだけ書いて、完結させずに放置している方々全てに読んで頂きたい一作です。あなたが放置した作品のキャラ達も、こうして真のエンディングを求めているんですよ、と(笑
自分が構築した世界観を、その世界のキャラクター達と一緒に冒険する。ライトノベルやファンタジー小説が好きな人は誰もが一度は空想したことあるのではないでしょうか。この作品はまさしくそのような、ある種の『理想』を経験させてくれる作品です。軽妙な文章。長時間読んでも苦痛に感じることはなく、スラスラ読み進めることができます。全く飽きのこない奥の深さも持ち合わせており、主人公と一緒に冒険しているような独特な感覚は癖になります。設定に関しても非常に練りこまれており、展開ひとつひとつに説得力があります。予定調和や御都合主義ではない、本当にそのキャラが動き、話し、生きているような描写といいましょうか。例えば作中の「歌い竜」に関する場面でも、思わぬ伏線から起承転結まで綺麗にまとめられており、ハラハラドキドキする展開から予想外の結末へ。さあ、あなたもシン君たちと一緒に『冒険』してみませんか?